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20110104/たぬ


――――コイツの方は何もナシ、っと。

「ハイどーぞー」

超スピードで電話内のデータを探り倒した後……まるで出鱈目なアドレスを登録し清流はそれを持ち主の掌へと返した。

犬、というより犬の飼主の事を嗅ぎ回っているのではと警戒したが……

会ったばかりの他人に携帯電話を丸投げし、あまつさえ平気で目を離す様な相手。
この場で疑うべくはやはりもう一人。
カメラの持主の方だ。

あんだけカワイきゃ老若男女魑魅魍魎誰が惚れたっておかしくない。横恋慕お断り。

もしも“慧ちゃん”が目当てなら。
知っててオレらのデート(主観)を激写したってんなら。
このガキ、コロス!! たたっ斬る!!

嵯峨野 清流。
この男、とんだ妄想暴走恋愛至上主義者であった。

「こいつアンタ、……から前にコレ貰ったって」

清流側の思惑など勿論知る由もなく……
口に出してしまった以上は後の祭り、今更言い直すのも何だと思い。

礼を欠いた蔑称をそのままに隼太は机上に投げ出されていた託朗所有の割引券を彼に差し示す。

「あーそう? 悪りーな、覚えてねーわ。
でも来てくれてアリガト」

言葉裏腹、悪びれもなく嘯いて。
つかコーラって。自販の方が安いでしょ。
すいと取り出したカードケースらしき物からドリンク無料券を一枚、隼太の前に。
彼はどうやらこの店で使える様々な種類の券を何枚も持ち歩いているらしい。

「……バイ、ト?」

「オレん家がやってんの。ココ」

――納得した。
ならば道端で出会った他人にいきなり券を配り店を売り込む行為にも頷ける。

「つーか次、お前の番」

促されたのは、思わぬ横入りにより後回しとなっていたアドレス交換の件である。

「あー、ぢゃ、準備。するんで」

赤外線通信により情報を送受信する、その為の前準備。
携帯電話を所持する大抵の人間ならば自身で難なく操作できる類の……

「デスヨネー」

「?」

「や、コッチは分かんなかったみてーだし。てっきりお前もかなーと」

清流の側では彼の電話を探る為の、数少ないチャンスと期待していたのだが。

「あー……、コイツ、は、何つーか。そういう奴だから」

抗議の為か何かしら喋ろうとした託朗をはたいていなし、隼太は精一杯の愛想笑いにて応戦した。

犬さえ触れるなら、触らせてやれるのならそれだけでいいというのに……面倒臭い。不慣れで、辟易する。


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この物語はフィクションです
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