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20110102/きぃ


「……でさぁ、」

渡された携帯を操作しながら、一人百面相を繰り広げる清流。
乗り出したまま、ぼんやり作業を眺める託朗。
二人を釈然としないまま見ていた隼太が、小さく呟いた。
次いで肩を軽く押し、座れ、と眼で指示する。

従順に腰を下ろすと、幸せそうな表情の清流から、隼太に視線を移した。

「何で、」

一言。
端的に声を投げ付ける。

瞼をしばたかせ、隼太の眼球を、そこに問い掛けの意味が書かれて居る、という様に、託朗は見た。

瞳を、純粋な疑問が彩る。沈黙したままの託朗に、それが焦燥と苛立ちを混ぜ始め。

「貰った。一昨日だ、」

隼太の眉間に、皺が現れる前に。静かに託朗が言った。




歩き回った所為で、体温が上がっていた。
弾む息を整え、怠さに耐え兼ねてしゃがみ込んだ。

何処か、賑やかな通りだった。
大きな道路は、何車線かに分かれていて、普通車と大型バスとが行き交っている。
現在地を教える看板等は無く、整備された歩道は、何処へ向かって居るかも判別出来ない。

抱えた膝に顎を乗せ、託朗は何処とも付かず視線を投げた。

行動を共にしていた医者と、敢え無く逸れたのは、数十分前。

路面に面したサロン、そこで行われる施術に、足を取られた。その隙に、巨大な交差点を繋ぐ横断歩道は赤から青に切り替わって。

託朗が、電子的な小鳥の囀りに振り返った時は既に、医者の姿は無かった。


「……何やってんのー?」

ぼんやりと人波を眺めて居た託朗に、声が掛かる。
あちこちに跳ねる明るい茶の髪、人懐こそうな眼をした青年はそのまま、待ち合わせかと問う。

「待ち合わせ、」

おうむ返しに呟くと、返答と取った青年は一人頷き、スラックスのポケットから、紙片を取り出し託朗へ押し付けた。




「……そしたら、直が来て、」

例の台詞を遺して、去って行ったのが、嵯峨野清流だった。

「何ソレ、」

いきさつを話す託朗に、溶けた氷で薄まったコーラを飲みながら、呆れた視線を投げる隼太。

こうもあっさり。自分が想いを馳せるきっかけを捕まれていた、と実感して、不機嫌そうに呟いた。

静かに息を吸い込む。
託朗が、窓の外を見はじめる隼太へ声を出そうとする時、携帯の畳まれる音が、二人の耳に入った。


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この物語はフィクションです
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