NO-STYLE×K-Selfish/novel | ナノ

N O S T Y L E



20101218/きぃ


ただならぬ気迫に、隼太は呼気を飲み込んだ。
それに幾分安堵の息を吐き、青年は改めて隼太を見遣る。

小柄な身体、深みの在るブラウンの髪。声の高さも、まだ幼さを残す。
開く身長差で目一杯首を上げ、吊り上がる大きめの眼は、微動だにしない。

見覚えは、無い。全く無い。

けれど。疑問は甚だしく残る。

首を巡らせ、連れの二人が店員に連れられて席に着くのを見届けた後、青年は声を潜めて言った。

「てか何で?何処情報ょ、ソレ」

二人の連れは、それぞれ真剣にメニューを開き、和気あいあいとしている。様に見える。

「何でって……、俺見たし」

釣られてか、ぼそぼそと答える隼太の声も小さく。
嵯峨野清流、と託朗が指した青年から擦れる視線、そこにはデジカメ。

咄嗟に掴む。長椅子に膝立ちになり、至近距離で突き付けると、

「は、」

「この、この犬……知らねー?ほんとに?」

縋る様な表情で。
急の動作に驚く清流へ、隼太はひそりと言った。

「いや、ちょ、近!てか近過ぎ!見えないから!」

眼前、どころか鼻先に突き付けられ、ぼやけて判別も出来ない。
堪らず言う清流へ、よく見ろと言わんばかりに、隼太がデジカメを渡す。

全画面で表示される画像を認め、自身の疑問全てを払拭しようと、しげしげ、眺める。

無理だった。

どんなに否定しようも、拒絶しようも、写し出される事実は揺るがず。
知っている。見間違う筈も無い、犬。つぶらな瞳は真っ直ぐ見つめてくる。

清流の脳裏に、駆け巡る隠蔽術。数秒間の出来事、それらに、いやいや駄目でしょそれはそこまでは人として、蓋をして。

「っと、取り敢えずこれ、」

隼太の手に、デジカメを返して。程近い席に陣取る連れを伺う。

何時の間にか、テーブルいっぱいにケーキの皿。
複雑な心境ながら、こちらの様子を気取られる心配は消えた。

背に冷たい物を感じつつ、携帯を取り出し、

「なぁあのさ、一応メアド教えてくんね?」

早口で言う清流。

脈絡の無い投げ掛けに、理解の遅れる隼太。と清流の間、そのやや上方に、別の角度から白い携帯が突き出た。

「俺はそれを知らないから、」

テーブルに片手を着いて、乗り出すように。
それまで、ケーキを黙々とつついていた託朗が言った。


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この物語はフィクションです
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