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20101124/きぃ
うなだれ、溜息を零しデジカメの画面を、指で突く隼太の口元に、無表情でフォークに刺さったイチゴを、ぐいぐい押し付け続けながら託朗は言う。
「超うまい。こちょ、の限定スイーツ」
何か言おうにも、口元にはイチゴが。
精々、大袈裟に噛み付くと託朗は目元を緩めた。
「誰、それ」
珍しく率先して、近くを通った愛想の良い中年女性に、何やら注文していた。
運ばれて来たのは、ショートケーキが二つ。
駅の改札を抜ける時、垣間見た人影。見覚えのある、それ。
もう一度。可能性がちらつき、追い掛けた。
呆気なく見失って、肩を落とす隼太をここに引っ張り込んだのは託朗だった。
「さがのきよら、」
聞き覚えの無い氏名に、思考は分断される。
「怪しくない。イイヒト宣伝また来てね。」
何かを朗読している。
そんな口調で、託朗は言葉を重ねる。
拳に収まるフォークは、忙しなくケーキを破壊する。
「……ゃ、全っ然意味解んねーし誰そ」
不自然に途切れた隼太の声に、託朗も釣られて顔を上げる。
「ぁ、」
席に程近い入口を眼にした二人が声を上げたのは、同時。
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この物語はフィクションです
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