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20101123/たぬ
切っ掛けは乗り過ごし。
結果的に遠出した日だった。
六芒健康広場。
その名の通り、六芒という名の町に位置する緑地公園。
山小屋をイメージした同名の駅が園の入口に隣接している。
動物園と遊園地が融合した全国的にも有名な総合アミューズメントパーク“六芒わくわくランド”と共に町が誇る、老若男女に問わず人気の長閑なスポットだ。
季節の花々は勿論のこと常緑林や天然の湖をも備え、被写体に迷うことはあれど困ることはまず無いだろう。
余分に支払う羽目になった電車賃に見合う成果を精々上げねばと溜め息混じり、しかし何処か浮かれた思いで隼太は早速世界をファインダーの向こうへと追いやる。
当初の目的地からすれば大分遠くへ来てしまったものだが……人工の建造物が一つも入らない、そういう風景を収めるには絶好の場所。
舗装された散歩道からは敢えて離れた。
周囲に人影はない。
煩わしいものは何もない。
今この時、世界の総ては少年のものだった
……筈なのだが……
風に乗り微かに流れてきた笑みの声。
元居た雑多な世界の中へ瞬時に引き戻され、彼は視線と共に今生まれたばかりの苛立ちをその方向へと走らせる。
兄弟かと一瞬当然のように認識してしまったのはその身長差の所為だろう。
こちらに気付かず歩く青年と、少年。
――――そして件の犬。
撮ったのは先々週の土曜のこと。
けれど次の週には同曜日、同時刻帯を狙ったにも関わらず待てど暮らせど彼ら……もとい犬が姿を現すことはなかった。
一期一会。
普段であれば彼のファインダーの中では主役と成り得ない一個体。
写真という形ででも手に入れることができた。
偶然の中の刹那を捉える。切り抜く。
言うなれば狩猟と同じ、仕留める為にはいくらセンスや撮影の腕を磨こうと確実は有り得ない。
いつだって運が作用している。
まして今回は動物相手、まるでポージングを依頼したかの如く真正面から最大限の魅力を仕留めることに成功したのは正しく幸運。
実のところ、隼太はそれで八割方満足していたのだ。
――――つい先程までは。
初遭遇時に接触しておけば……と、悔やむ方向へ思考を流そうとし思い至る。
初対面。二人連れ。
しかも片方はどう見ても年上の人間を相手に、自ら交流を図ろうなど……そんな選択肢は素より持ち合わせてはいなかった。
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