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20120610/きぃ


判っている。
締まっていく右腕。関節ごと外れ落ちる感覚。
撮られるのが厭。
視界は揺らぐ芝生。身体は初めての衝撃に、竦んでいる。

「もうしませんって言え!誓え!なんの真似だコノヤロウ!」

言い募る清流。一言重なる度、隼太に巻き付く腕の力が強まる。
抵抗らしい抵抗も無く、綺麗に決まるコブラツイスト。

強情。や、なんか……震えてるコイツ。マジ俺いじめっ子状態かょ……。内心、困惑し始めた清流の耳に、呟きが掠め、

「ん?なに?」

僅かに腕に込める力を緩め、問い掛ける。

「ご、め……。も、俺……まだ死にたくなぃ、」

蚊の鳴く様な声量。水分を含んで潤む眼が、辛うじて清流を捉え。

ただの言い訳、の割に、尋常ではない言葉の重さ。
それを疑問に思った清流が、問い質そうと口を開く。

「っ……タクロウ、」

俯いたままの隼太の声に遮られ、気が逸れる。
絞り出す様な、か細い声に拘わらず呼ばれた当人は、顔を向ける。

青白い顔色が仄かに色着いて、眼元を微妙に緩ませた託郎は、腕に犬を抱いていた。

そうしていると、まるでぬいぐるみの様だ。
犬を丁寧に離し、隼太を一瞥。立ち上がると、地を蹴った。

「狡い。」

清流の耳元で、聞き慣れない声が言った。
静に、けれど、どこか刃物を思わせる冷たさに、思わず身体全体の向きを変える。
弾みで、隼太に掛けたコブラツイストは解いてしまったが、清流にとってそれは問題ではなかった。

足元で呻く隼太が、右腕を抑え、託郎へ指示を出す。

「やれ!」

斯くして、いつの間にか託郎の手に渡っていた、隼太所有の一眼レフは、呆気に取られる清流を焼込んだ。


躊躇い無く、桜色の塊に手を差し込み、託郎はしきりに狡いと連呼している。
無事に一眼レフを回収、奪われまいと抱え込み、必死に、ごめんでもまだ死にたくないごめん、隼太は紙の様な顔色で呟いている。

「まじもう何なの?!」

子供二人と、円陣を組む形で座り込み、清流は叫んだ。
意味が解らない。や、オレが馬鹿なの?いやいや、コイツらが意味不なんだよ!渦巻く胸中。

「俺も隼太としたい、プロレス。狡い」

「し、しゃしん……とりたかっ……、」

半ば独り言に近いそれに、二人は律儀に答える。
あまりの温度差、空気感の違いに、投げやりな笑いが込み上げてきた。

うららかな木漏れ日の下、清流の渇いた笑い声が上がる。


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この物語はフィクションです
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