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20120609/たぬ


「おわっ早っ!!? つかがっつき過ぎだろお前ら!!」

照準は託朗と犬とを捉えていたのだが……清流が大袈裟に跳びずさり、呆気にとられ隼太は顔を上げた。

「あ、や、ゴメン。撮られんのあんま好きじゃねーし過剰反応っつか。
じゃあオレ、アッチ行っとくからさ。何か弁当とか持たしてくれたし折角だから昼は食って帰れば? 気ィ済んだら呼んでネー」

気を遣ってくれたのか。
はたまたお守りが面倒なのか。
まとめて一気にそれらを告げると、託朗と犬に『っつーワケで』と一声掛けて。
彼は東屋へと涼みに戻ってしまう。

確かに狙ってはいたのだ。
託朗と犬とを撮る中で、密やかにさり気なく……清流をもファインダー内に収める。
出された条件の一つを遂行せんと。

だが、犬の警護任務の為近くはあるが幾分距離が開いてしまった。
これでは当初の予定通りに、とはいかない。初動で撮ってしまえばよかったと今更悔やんでももう遅い。

浮かぶのは不遜なあの顔、あの態度。
犬や清流に惜しさは感じても彼がセットとなると途端に憂鬱になる。早々に縁を断ち切りたい。

“できるだけ沢山”との指示だが、例えば文句の付け様もない一枚さえ仕留めたなら。
それさえあれば何とか切り抜けられる……かもしれない。或いは。

兎も角一枚も無いなどという事態は非常にまずい、許されない。何より面倒だ。早々に縁を断ち切りたい。

チャンスを、掴み取る。
いつになく熱血思考の隼太の銃口、もといレンズが標的を狙い閃くも……

「ちょ、何でコッチ向けんの!!」

負けず、相手も写真嫌い特有ともいえる反射神経で顔を背ける。すかさず腕でブロックする。
最初は笑い混じりに返していた彼も

「って、ヤメテ!?」

隙をつくような動作で何度も狙われ続け

「え、偶然!? 偶然なの!!?」

困惑と共に次第に語気を荒げて……

「つかホント何で!!?」

遂には

「あ゛ーー!! テメーもうアッタマきた!!!」

立ち上がり。
ドスドスと歩み寄って来る清流に対し、逃げ出せず声も出せずに隼太は戦慄する。

その背後に回り、左脚に対し外側より自らの左脚を回し込む。引っ掛ける。
更には彼の右腕の下から器用に上半身をくぐらせ、後に両手で首をホールド。クラッチを決め込む。

「何で執拗に撮ろうとすンだよ!! ヒトの嫌がるコトはヤメろ!!!」

一瞬の出来事。
俗に言う“コブラツイスト”の完成である。


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