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20120102/たぬ


譲る気はない。
しかしこのままでは埒が明かない。

無理だというのに次々散々それぞれに、しかも一部誤解や意味不明な言動も交え捲し立てられ食い下がられ。
辟易としつつも内心清流は苦笑していた。

兎にも角にも『会わせろ』の一点張り、折れて頷くまで粘る勢い。
それどころか託朗など、まるで清流を悪者扱い。実力行使も辞さない構えだ。

悪気がないのは解っている。
彼らは交渉のつもりだろうが、結局自身の要望を押し通さんとしているのみ。
つまりは子どもにのみ許される“我が儘”である。

次第に上った血も下がり。
例えば犬の写真を携帯電話を介し提供する等、譲歩案を練る彼だったが……


――“何でもするから”?


ありふれた懇願の台詞。
清流が最も嫌う類の、それ。
黙ってはいられなくなる。

「……あのさ、何でOKしないか分かる? 別に意地悪ってワケじゃないよ?」

先程までとは打って変わり、落ち着いた声色。その表情。

「こっちにだって、ダメな事情も理由もあるんだけどさ。そういうのは気になんない?? 会えればそれでヨシ??」

続いた清流の言葉に隼太は、冷水を浴びせられた思いで唖然としてしまう。

まさしくそうなのだった。
犬との再会・託朗の喜ぶ様に想いを馳せるあまり、勿論配慮するべき相手の都合にまるで頭が回っていなかった。

「“何でもする”って、オレが悪党だったらどーすんの? 軽々しく口にしちゃダメな台詞だよ、ソレ。オトモダチだって、それでお前が困るのはヤだと思うよ??」

オトモダチというのは……やはりこの場では未だに視界を塞がれ両腕をワタワタさせている託朗のことであろう。

無礼を働いたというのに、その相手は怒るではなく言葉を、口調を選びあくまでこちらを諭さんとしている。

その余裕ある姿は隼太が描く“オトナ”のそれで……幼い自身との差をまざまざと見せ付けられた思いがした

「うーわー! キヨが子どもイジメてるよ」

――が。
突如として割り入ってきた非難の声。
……に、目の前の男が幻滅レベルの酷い表情を張り付け硬直する。

反射的に振り返ると……
そこには声の主であろう長身の女性と、その隣。

「虐めている風ではないですよ。きっと何か」

「あ゛!!!」

状況も忘れ、思わず声を上げてしまう。
言葉を遮られ怪訝な表情を向ける彼こそ、あの日清流と、犬と共に居たあの少年だった。


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この物語はフィクションです
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