NO-STYLE×K-Selfish/novel | ナノ

N O S T Y L E



20111211/たぬ


え?
ナニコレ?
こーゆーの売ってんの??
どー見てもスピカちゃん、ってかおんなじ種類の犬ナンデスケド!!?

柴犬、チワワ、スピカちゃん、
みたいな……もしか人気の犬種ナノ??
オレが知らなかったダケ??

隼太の手中の小さなディスプレイ内で蠢く、これまた小さな動画一つに清流の頭は翻弄される。
思わず自身の常識をも疑い始めたが……

――いや、違う!!

すぐに立ち直る。
あの日、散歩に出掛ける前週。
強引も強引な理由を捻り出し、上がり込むことに成功した学園寮の一室で。

“お散歩行かないの?”

何とは無しに、勿論内心では下心満載で清流がそう問うと。
犬にブラシをかけていた愛しい彼の想い人は、こう告げた。

“あまり連れ出したくないんです。
近場にどこか、人目に触れない場所でもあればいいんですけど……”

諦めの色を滲ませた、それ。
そりゃそうだよな、と清流は思う。
こんな犬は、生物は、他にはいない。
やはり唯一無二の何かなのだ。

“彼”と犬を自分が守らなくては!!
つーかお忍びデートとか最高ッ!!!
“彼”と犬を自分が守らなくては!!

授業をサボり、学園を抜け出し、リサーチした穴場中の穴場。
犬を忍ばせ乗り込む電車はさながら逃避行。
“彼”の不安げだった表情が、野を駆け回る犬を前に笑顔に変わる。
名残惜しさを押し隠す“彼”に、また来ようと告げた際のあの表情。
あの返答……
その瞬間は一生忘れないだろう。

それなのに。
まさか見られて、盗撮までされて。
“彼”が知ったらどう思うだろう。
少なくとももう二度と、散歩に出掛けようなどとは思わないだろう。
あんな顔も、きっともう見せてはくれない。それどころか……

知られる前に、斬る!!
証拠という証拠を粉砕してやる!!
こいつらやっぱ、この場でバッサリ叩っ斬ってやるッ!!

程度はあれど、色に惚けた頭でまともな思考など出来る筈もない。

そしてこの嵯峨野 清流という男――
“彼”への愛をすっかりこじらせ、その度合いも最早常人の域を遥かに超越していたのである。

「おっ、お前等……ってかお前ッ!!
金かっ!? 犬かっ!!?
まさか慧ちゃん狙いかよ!!?」

突然始まった意味不明な追求。
もちろん隼太は瞠目するも……

――ケイちゃん??
その部分だけは何とか聞き取ることに成功した。
犬の名前だろうか、と思う。


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この物語はフィクションです
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