01
「―――と、なるので彼は裏切りを侵してしまったため、後に暗殺者に終われるハメになったのではないでしょうか。」
私のプレゼンが終わると同時に、そこに居たすべての人がスタンディングオーベーションをはじめた。
「素晴らしい発表をありがとう。アヤカくん。いつもながらにいい出来だった。」
教師までもが立ち上がり、握手を求めた。
「・・・ありがとうございます。」
私はどこで何を間違えてこんなことになったのだろう。
01.どうやら、何かをまちがえたようです。
夏学期最終日。最後の授業の歴史でプレゼンを行うのだが。
(何で、こんなプレゼンが・・・)
ハァ・・・と溜息を付き、嫌々とプレゼンの原稿を見る。
私は舘本 綾香。犬派より猫派。趣味はお絵描き、音楽を聴くこと・・・ってどうでもいい。
私のプレゼンはとっくに授業で解説されている内容を少し改良しーの、ちょっとだけ調べなおしーの、そのぐらいしかやってない。なぜ、そこまで賞賛されるのかは私も知らない。まず、知りたくもない。
「次・・・ウィトウィッキー君」
サム、か。時計を見るとサムがプレゼン中に終わりそうな時間だった。
車を買うとか言っていたな、40ドルとAが3つで全て揃うはず。
バチンッ!!
何の音?サムを見てみると、痛そうな歪んだ顔をしていた。
そして、遠いから確認しにくいけど足元にはゴム。誰がこんな幼児くさい悪ふざけをするのだろう。
いつのまにやらプレゼンが始まっていた。
彼から出る言葉は私を勧誘するような話し方。
私にはこんな技術なんて持ってないから、何十倍も彼のほうがうまいのに。
サムの手元から出てきた資料には以前、見せてもらった古びた眼鏡も入っていた。
「アーチボルト・ウィトウィッキー。偉人でしょ?その彼が使っていた眼鏡。」
眼鏡のほかに、古ぼけたいろんなものを出したと思えば
「これは40ドル、これは50ドル。どう?ネットオークションにも出しているんだけど」
・・・。
初耳なんですけど。
君はそこまでするのね、ったく!!後で一発かましたる。
その場で勧誘らしき事をしていたサムだったが、チャイムが鳴りゾロゾロ、と帰る準備をしているクラスメイトを見て、がっくり、と肩を落とした。
「ばかだなぁ、此処でオークションかい?君は本当に・・・」
「いやぁ・・・後もう少しだったのに」
「もう少しでもクソもないよ?!!」
「よしっ!!Aだ!!A3つそろった!!後は・・・」
「交渉お疲れさん。」
先生に成績を引き上げるよう、訴えていた後の彼に声をかけると、キョトンとしていた。
「え…みてたの?」
「くくっ、まぁ、いいんじゃない?そんなにがんばっている人じゃないと引き上げてもらえないしさ。」
「ナイスフォローありがとう。アヤカ。君は成績どうだった?」
「相変わらず。先生の評判だけでこんな成績つけられたみたいで、気分は最悪だよ。」
「オールA+・・・。やっぱり期待とかされるからかな?」
「変な期待なんてごめんよ。あ、そうだ。」
ごそごそ、と鞄をあさり、それを彼に手渡す。
「・・・え?!!いいのかい?!!」
彼の手には40ドル。私の実費だ。
「もちろん。さすがに遺品を受け取るのは無理だけど、ちょうど100ドルあったからさ」
「ありがとう!アヤカ君はやっぱり最高の友達だよ!!」
「こんなことしかできないけど、喜んでくれたのなら嬉しいよ。じゃぁね。」
彼は、決して賢い、とか天才、とか言ってくれない。彼なりのちょっとした気遣いが私を救ってくれる。いいよ、サム。私はいつも貴方に救われてるの、これぐらい安いもんよ。
人に何かするって久しぶりだなぁ…とか思いながら微笑んで、帰りを急いだ。
高校生が100ドル持ってるとか…笑
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