09
もう少し
もう少しで
助けられた、はずなのに。
何でこんなにも
悔しいんだ......?
09:届かない叫びは、何処へ
ぼぉ、と車の窓越しに猛スピードで駆けていく夜景を眺める。もうかなりの時間がたったが、サムは無事なのだ、ろうか。俺がこんなところに戻ってこなければ防げた事件だったはずだ。いつもこんなんだ。自分の本能のままに、のんきに行動を起こせば・・・。誰かが自分のために何かに巻き込まれる。
『・・・・クソッ!!!!』
思いっきり、拳をサイドドアに叩き付けた。あ、これ、ジャズだ。と思い、撫でてしまった。突然、車体が震える。
『な、なんだよ。』
「いや、ちょっとな・そんな男勝りなのに、"可愛い"って、思っちまった。」
"可愛い"・・・・?
カワイイ、だと・・・・・?!!
『〜〜〜ッッ!!!ジャズ!!!ふざけるなっ!!!』
顔が火照る。何を言ってる?!!と叫ぶと、"わりぃ、わりぃ"と軽い返事が返ってきた。
―――どこまでのんきなんだ。このロボットは。
だいたい、"カワイイ"という要素はとっくの前に大型ごみとして投げ捨てた。結局なにやっても、目立って騒がれてしまうなら、すべて捨ててしまって地味な生活を送るんだ、と。精神的に苦しかったんだからな、あのときは。
ちなみに雅は、自分が大急ぎで作ったプログラムをインストールして、人間になっている。こう見えても、ハッキングとか得意なんだぜ。
信号無視を繰り返して猛スピードで突き抜けていくと、そこはもう、目と鼻の先だった。
『ジャズ!これ開けて!!これ!!ドア!!!』
「はあっ?!!オネェチャン、死ぬ気か?!!」
『こんなので死ぬんだったら、やらないから!!』
無理やりドアを開けて、雅の腕を握る。「え、俺も?」という声が聞こえたが、あんたが居ないとどうするんだ。トランスフォームしてバイクに戻れよな、ったく・・・。
『ミヤビ!トランスフォームしろ・・・よおっ!!!!』
《いやだあああああああああああああああああっっ?!!!!!!!!!!!》
男のミヤビを車から投げる腕力はどこから出たんだろう、と今更ながら思った。
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