篤志の手ってね、凄く綺麗なんだ。篤志の手が私を撫でてくれるだけで私はすっごく嬉しくなるの。
でも篤志は昼間は学校に行かないといけないし、今は受験で凄い大変だし、サッカーも監督さんが変わっちゃって大変なんだって。

いつも篤志は家に帰ってくると溜息を吐いた後に「ただいま」って頭を撫でてくれるの。
でも今日は篤志が帰ってきてもそのままベッドに倒れ込んで撫でてくれないの。
そっと近寄ってみると小さな嗚咽が聞こえてきた。
「名前、何でだろうな」
「?」
「内申の為だけだった筈なのに、サッカーを辞めたのが凄い辛いんだ」
泣かないで、泣かないで篤志
私の声は届かないからそっと篤志の頬を伝う涙を舐める。

「ごめんな名前、ただいま」

そうしたらまた名前を呼んで私の頭を撫でてくれる。
篤志、私はサッカーが何かわからないけど、篤志が好きなものができなくなるのは私も悲しいよ、篤志


それから少し経った。
篤志はあの次の日からはまたいつもみたいに戻ってた。ただ変わったことはいつもより早く帰ってきてくれるようになったこと。
沢山篤志との時間ができて嬉しい筈なのに私の心はもやもやしていた。
そんなある日のことだった。

「名前、ちょっとの間大人しくしててな」
そう言って私は篤志の部屋から閉め出されてしまった。家中なんだかとってもあわただしい。
仕方ないのでしばらくうろうろしていたら篤志が迎えに来てくれた。
「名前、また俺サッカーできるんだ」
久しぶりに篤志から聞いたサッカーという言葉、何だかよくわからないけど篤志は嬉しそうだった。
「それでな、父さんの転勤でこの家にはもう住まないんだ」
「向こうには名前を連れていけない」
「ごめんな、名前、絶対に会いに来るからお祖母ちゃん家で待ってて」

え?

篤志、何を言っているの?なんで閉じ込めるの?この人はだあれ?
篤志、篤志、やだよ離れて行かないで

「ばいばい、名前」

そういって君は、ただいま以外の言葉を言って私の頭を撫でる


私から篤志を盗るサッカーなんて大嫌いだ


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