「ねえ先輩」
貴方は私を愛していますか?
貴方は私の事を見ていますか?
貴方は私の何を好いてくれたんですか?
目の前に広がる赤を見て、徐々に歪んでいく視界の先に居る先輩の紫が網膜に焼き付いていく。
周りの雑音なんて私の耳には届いていない
青白くなっていく先輩の肌にそっと触れた瞬間
「名前」
そう、先輩の口が動いた気がした。
南沢先輩
センパイ
篤志さん
私の口が形を歪ませる。
私の手が先輩の服に皺を作る。
溢れだした塩水が赤を滲ませる。
全てが、先輩の紫と赤以外がモノクロの世界に変わっていく。
海の底に沈んだ
(貴方が居ない世界は私にとって深海の様だ)