砂糖菓子に傅く
さーふ、と舌足らずに名前を呼ばれる。
白いシーツの上に広がる金色。お世辞にも手入れが行き届いているとは言えないが、それが彼らしさを感じさせるブロンドの髪だ。広がった髪を一房持ち上げて、落とす。重力に逆らわないそれは、照明の光加減から、淡い輝きを放ちながら、シーツへと落とされる。そうすると、彼は気持ち良さそうに目を細めて、こちらを見やった。

「どうしたんだい、ヒート。今日はやけに素直だね」

「ん……」

まるで猫のようだ、と正直思った。この気難し屋のことだから、何かしらに常に腹を立て、気に入らないことに反論をする。そういう彼をいつも見ているからか、いま自分の目の前にいる彼が別人のように思えてしまってしょうがない。
でも、これが彼の心を許した状態なのだと思えば、悪くない。
そう考えてしまう自分に苦笑し、目を細めているヒートの額に軽く口づけを落とす。すると、擽ったそうに身をよじる彼が自分の方を見て何やら不服そうな顔をした。

「そうじゃない。…足りない」

君こそあのお姫様よりよっぽどわがままじゃないのだろうか、大の大人の可愛らしいお願いに了承の意を込め、彼の首筋に軽く歯を立てた。普段聞かないような甘く、高い声を漏らす彼の目は情欲に濡れていて、とても美しかった。それを見て自分の中で感情が、昂り始める。血がふつふつと煮えたぎるように、心臓の鼓動が早くなるように、その時は近づく。しかし、それを表に出さず、見せぬようにして、先の要求に応えようとヒートに覆いかぶさった。

「分かったよ、ヒートの心のままに」

そう言った時のヒートの顔はどこか嬉しそうでいて、陰があるように見えた。
しかしその顔は見てきたどの女性よりも綺麗で、蠱惑的であったのだ。

全く、どうかしてる。

そう思いつつも、僕はヒートに口づけをしたあと、角度を変えて深く、蝕むように彼の口内を舌で犯し始める。その中は甘い、ヒートの味がした。











ーーー




夢を見た。俺が、ヒート(に似た人物)をまるで割れ物を扱うかのように優しくしていた。あの行為の意味はわからないが、少なくともヒートが嫌がっている様子はなかったし、俺自身もそんなヒートを見て、嫌悪感を抱くことはなかった。むしろ、興奮した。支配欲が満たされるようなあの顔と、自分の中にうごめく何か。それがなんだかは、まだ分からない。






「……可愛かったなあ」

ぽつりと呟いた言葉は、サーフの恍惚とした表情を表すには十分な表現であった。









end



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