アルジラの食べ方は綺麗である。
先刻まで活動をしていた生命体を食らうことに、また自らの手で仕留めることに最初は抵抗があったようだが、今では色々なこともあり、吹っ切れて食べれるようにはなった。
しかし彼女は優しい。自我を無くして襲いかかってきた悪魔に対しても食らう時には丁寧に、それこそ肉片の一欠片も無駄にできない、とでも言うように丁寧に咀嚼するのだ。
かり、かり。かり、かり、かり。
骨についた部分まで味わう彼女は、どんな気持ちで食べているのだろうか。
自分たちは飢えが満たされるまで、思い悩む心とは反対に、他者を食べ続けなければいけないのだ。
そのジレンマを彼女はよく知っている。だからこそ彼女は言うのだ。
「ーーせめて、苦しまないように」
咀嚼音50題より
7.かりかり
アルジラ姐さんはお優しいのです。