太陽は独り占めできない
昔から、友人というものには尽くすものだと思っていた。小学校の頃は、色々とあって同級生と接する機会なんてないも同然だったから、友人とは互いを思いやる綺麗なもの、なんていうのは理想で、片方が尽くすのが友達なのだ、と幼いながらもそう考えていた節もあるからだが。
だから、自分が月島の腰巾着揶揄されようとなんとも思わなかった。だって実際には自分が月島について行ってるだけなのだ。月島は、自分のことを友達と思っているのだろうか。でも月島のパーソナルスペースに入っても何も言われない位にはそう思われていなくもないかな、と思ってしまう。まああんまり近いと不機嫌になるんだけどね!そんな感じで中学も過ぎ、高校でも変わらずそのままで行くのかな、と思っていたのだが。驚くコトに俺、山口忠として接してくれる友達が出来たのだ。

「山口!今のサーブすげえ〜!シャッて入ってた!」
「う、うん、ありがと日向」
トンッ、と打ったボールがネットの向こう側で跳ねた。このサーブは嶋田さん直伝のもので、俺にしてみればまだまだなものだった。それでも、目をキラキラとさせ褒め倒してくる日向を眩しいな、と思った。
俺より小さいのに速攻の時の姿は、まさに羽を広げた烏のようなのだ。跳ねるーーいや、それより飛ぶというほうが近いだろうか。まさにそんな感じなのだ。見る者を圧倒し、威圧する。だから一年でスタメンに入るのだろう。本人は「影山とセットになってるからだろうなー」と悔しそうに言っていたが、それは俺もだ。一年の中で、スタメンに入れなかった。悔しい、でも妬む気はない。ツッキーはあの身長に、ブロックの能力が高いから。影山は、スパイカーに合わせるような、精密なトスがある。
俺だけ、秀でたものがない。
一年の中でそれはよく分かっていたからだ。でも彼らはそれに慢心するコトがない。先へ、勝利をつかむための術を手に入れるため。常に新しく、使えるものは使う。それに置いていかれるのだけはごめんだ、そんな気持ちで俺は日々練習していた。しかし彼らはやはりと言うか、普通の人と違うのだ。
日向なんて知らない他校生といつの間にか仲良くなっていたし、影山に至ってはコミュ力を日向から分けてもらえ、と思う位他人と関わらない。ツッキーは、大丈夫俺がいる!
そんなバラバラな一年の中で日向は何を思ったか、俺にも絡んでくるようになった。不思議に思って、俺なんかにかまって楽しい?と聞いたことがある。そう言うと日向は、
「影山とか月島と喋るより、山口と喋ったほうが楽しい!」
と言いのけた。名前を出された二人にしてみればこの上なく失礼だろうが、俺は驚いた。影山の心をあれだけ開かせたのは他でもない日向だし、ツッキーも友人として、さらに日常的に嫌味を言う接し方をしてくるのは日向だけなのに。そんな二人より俺なのか。まあそんなこともあったりして、現在日向とは仲がいい。
「山口いいなぁーサーブ上手く決まって!」
「日向だって練習すれば上手くなるって」
コロコロと表情を変える日向と喋るのは楽しい。ツッキーと喋る時はたまに少しだけ反応してくれるけど、大体は俺の一方的なお喋りだ。反応を返してくれるのは、ちょっと嬉しい。そんな日向を見ると、ボールを両手でくるくると器用に回していたが、顔はどうにも不機嫌そうだった。
「日向どうしたの?機嫌悪いみたいだけど…」
「…月島がさぁ、『君ちょっとはサーブ入るようになりなよ、レシーブダメなんだから』って言うんだぜ!?あいつもレシーブ大王様に言われたくせにー!」
キリ、と何かが痛む音がした。なんだろう、日向の口からツッキーの名前が出るなんて、今まで日向と喋っていたのは俺だけだと思っていたのに。
…思っていただけだ。ツッキーにも、影山にも平等に接して居るだろう。俺以外とも喋っているのは当たり前だ。でもよくよく考えるとツッキーの態度に疑問を抱くようになる。
一番近い所に居るハズの俺でもツッキーから話しかけられることは皆無に近い。しかし日向にはそれが行われている。日常的にだ。そしてハッと気づいた。
「…そうか、ツッキーがか」
「おう、そうなんだよー…って、あれ山口?」
そうかそうか、あのツッキーがか。思わず頬が緩む。素直じゃない彼が日向に接触するには、嫌味を言うのが限界なんだろう。あの今までの態度に納得がいった。これは友人として応援しなければ。ウキウキになっている俺に、日向は疑問符を浮かべているようだった。しかたない、こんな嬉しいこと他にないのだから。
「日向、ツッキーをよろしくね!」
「はぁあああ?!やだよ!!」
「ツッキー素直じゃないから!そこ分かってあげて!!」
「だからなんだってんだよー!?」
日向の叫びを無視して、ネットの向こうへ入ったボールを取りに駆け足で向かう。やばいちょっと嬉しいかも、人の幸せは自分の幸せとかいう、まさにそれだろう。ボールの場所まで行き、その近くでサーブ練していたツッキーに少し近づくと鬱陶しそうな目で見られた。でも言わないと、俺は周りに聞こえない、けどツッキーには聞こえる位の声で言った。
「ツッキー!日向とのこと、応援してる!!」
「はぁ?!」
いきなり言われたからか、ツッキーのいつものクールな表情は消え、慌てた表情になっていた。ツッキーでもそんな表情するのか、とちょっと驚いた。

でも、大切な友達が好きなら、応援しないとでしょ!

それもそうだし、俺の小さな友達が取られてしまうのだからこれくらいは許されるだろうと、俺はにんまりと笑った。



end



-------


マタねコ様へ
この度は相互ありがとうございました…!月日ちゃん同志で本当嬉しい限りです。月日前提無自覚山日、ということだったのですが、これだと月→日+山にも見えますよね…。うああすみません;;
ではでは相互ありがとうございました!

お持ち帰りはマタねコ様のみどうぞ。


14 0716
蜂蜜レモンと砂糖 みの





2/5
<< bkm >>


戻る
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -