「へー。で、君はその子と晴れて恋人になったのかい!」


あまりにも飛躍しすぎたジェームズのお陰で思わず飲んでいる最中だったレモネードを真向かいに座っていたシリウスに向かって吹きかけてしまった。

「し、シリ、ウスごめっ!ごほ、げふっ」
「ピーター、落ち着いてから謝ったら良いよ」

隣にいたリーマスが優しくピーターの背中を摩っていた。ジュルルル、とアイスココアを飲みながら、だけど。(ちなみに二杯目だ)
シリウスは無言で威圧しながらべたついた髪を絞り水気を切り、ピーターが既に破っていたまだ使ってない手拭きで顔やら手やらを拭いていた。
不幸中の幸いと言って良いものか微妙だが、宿題はそうとは知らずに避難されていたので無傷であった。

今年は特に早々と実家から逃げ出したシリウスが向かった先はジェームズの家で、じゃあ皆で集まろうか、とピーターも呼び出し、リーマスの家へ押しかけていた。
リーマスを呼ぶ側に据えるとかなりの確率で来ないからという強引な理由なうえ、アポ無しだった。リーマスは呆れた顔はしていたけど、嬉しそうだった。
そして「出てけと言ったら帰れ」という約束の元、のんびりと宿題を進めながら過ごしてる。

「だいたいジェームズ、ピーターの話からどうしてそこまで話が飛ぶんだい?」
「よくある恋愛パターンじゃないか!一目惚れした女の子と運命的な出会いを経て」
「ひ、一目惚れって……!」

ピーターの顔がぼっ、と赤くなって、心なしかふしゅーと湯気が立った気がした。隣でリーマスがクスリと笑った。

「ばーか、ピーターはお前みたいにべたなアタックしないからそこまで行けたら奇跡だろ」

ざっくり傷付くことをシリウスが言ってのける。
確実にジュースの件でキレてると分かっているのでピーターは何も反論せずにいた。

「ってーか、そのナマエって奴はマグルなんだろ?」
「うん」
「……よくふくろう便を受け入れたな」
「………そーだね、僕もビックリした」

しゃべる度に甘い味がする、とシリウスが眉を寄せて舌を出した。
うへー、とあらぬ方向に目を遣ると、一羽のふくろうが太陽の光を背に受けこちらへ向かっていた。

「ピーター、あいつお前の梟だろ?」
「え、あ」

ふくろうは何の躊躇いもなく着地した。
ピーターの頭の上に。
さらにびちゃっ、と嫌ーな音がして、しかも背中に違和感を感じた。心なしか臭う。どこまで飼い主を馬鹿にしているんだこの梟。
直に目撃してしまったリーマスは哀れむよりも笑いが優先されてしまい、ぶくく、と笑いを堪えるのに必死になっていた。

「……………たしかに」
「やっぱりピーター、君はナマエに恋のアタックをするべきだ!!」
「……ジェームズ空気読め、人の話聞け」

堪え切れなくなったリーマスが腹を抱えて笑い出した。
そんな息子の様子を眺めて微笑む両親がいた。


……ありのままをナマエに手紙に乗せるには情けない、そんな日になった。
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -