奇人変人なんて言葉は似合わない(と思いたい)
友達以上恋人未満な相手である名前は非常に妙な収集癖がある。
「その心は?」
「おもしろければなんでもオッケー!」
単純明快、そんな彼女に振り回される、そんな間抜けな話のひとつ
朝方、一羽のくったくたにくたびれた梟が小包を携えて名前のところに飛んで来た。実家の梟らしく慣れた手つきでそいつの世話をしながら器用にその包装紙を開けて、ひとり、喚声をあげながら中身を取り出して装着した。
「じゃ〜ん、シリウス、これ見てこれ見て〜!!」
「…………………」
「え、反応なし?」
むしろどう反応しろと?
名前に送られて来たのは変な眼鏡だった。
プラスチックの分厚すぎる黒縁フレームになんのギャグだと思わせる、これも同じくプラスチックで分厚すぎるレンズ……お分かりになる通り、もろ作り物。
しまいにはそのレンズは円形に何層にも重なっていて絵に描くのなら誰もが普通の眼鏡にぐるぐるした渦を描くだろう。
「いやー、でかした、姉ちゃん」
眼鏡をかけたままさっきからプレートに乗っていた玉子に食いついた。
「で、なんなんだその眼鏡」
「んっとねー、日本のアニメのキャラクターがつけてんの」
「………ふーん」
「未来から来た自称猫型ロボット君がドジで間抜けでお馬鹿な主人公に付き合わされるってゆーストーリーなんだ」
「…………で、おまえはそのドジで間抜けでお馬鹿な奴がしている眼鏡をしてるのか」
「ぴんぽーん」
いかにも嘘もんらしいレンズの奥になった名前の目はいつも以上に小さかった。
し、なんか白濁してるようにも見える。
「ね、ね、似合う?似合う?」
あえて無視しようと腹を決めたのにそんな事聞きながらテーブルに乗り出してきた。
というか、そんな眼鏡似合う人がいるなら見てみたい。ギャグだろう、それ。
と、いうか似合うも似合わないもないな。
「ダメ」
「え、似合わない?」
「眼鏡越しで俺見るの禁止」
直接その瞳を見せて、見て
ポチョン、と角砂糖ひとつ紅茶に溶かして飲んだ。
不思議そうな顔で正面にいたピーターが声をかける。
「リーマス、砂糖それだけ?」
「…………うん、すでに胸焼けするぐらい甘ったるいんだ」