朝食の席は、いつも決まって入り口に一番近い寮のテーブルの端。
ちょっと脂っこい髪がチャーミング(だめだ、やっぱり私頭変かも)な彼の真ん前。
それが私の定位置。


「おはよう、セブルス」
「………名字」


眉を寄せられちゃったよ、分かってるよ。
退けって言いたいんでしょう?

セブルスはいつも壁側に座ってる。
そしたら必然的に真っ直ぐ前を見ればグリフィンドールの奴らの席もバッチリ見えるのよね。

そして彼の視線の先もちゃんと分かってる。


「今日も可愛いわねーエバンズは」


おおぅ。そう睨むでないよ、セブルス。(それでも私を見てくれてれば、それで良い、なんて)

グリフィンドールの優等生・リリー=エバンズは、まあ、同じ女の私が言うのもあれだけど、すごく可愛い。っていうか美人系?
スリザリンとグリフィンドールっていう敵対寮だから、まじまじと合間見えるわけにはなかなかいかない私(ああ!ホントに損してるわ!!)はあまり見たことないけど、綺麗な紅髪とエメラルドグリーンの瞳は目を奪われる可愛さ!って他寮の男子が騒いでた。

騒いじゃいないけど、セブルスもそんな男子の一人。
それは私が彼を好きだと自覚する前から知っていた。
目線の先には絶対彼女、いるんだもん。


あ、って言うか、見てよ、また悪戯仕掛け人がセブルスにちょっかいかける為の罠仕掛けてるわ。
でも、私は敢えてセブルスにそれを教えない。
分かってる様子さえ見せない。

だって、いつもいつも悪戯引っ掛かってイライラしてるけどね?半分以上、自分の不注意だから。
見りゃ分かるのに。

パンプキンジュースを飲んでいると、セブルスはさっさと立ち上がった。
(ちらっとグリフィンドールのテーブルを見たらエバンズもいなくなってた)
奴は次の授業が一緒でも私を待とうとなんてしたことない。


「名前ー!次の授業一緒行こー」
「おっけ」


どおうわぁっ!って悲鳴が聞こえた。

きっとセブルス、罠に引っ掛かったのね。ちょっと良い気味だわ。


「またポッターたちの仕業ね?」
「可哀相なスネイプ」


同寮の友達さえクスクス笑う。
仕方ないわ、敵対寮ってこと、忘れちゃうくらいグリフィンドールの問題児たちはハンサムなんだもの。

やめなさいよ!と女の子の声が響いた。

ああ、リリーって優しいなあーお友達になりたい………無理だよなー

毎日毎日繰り返される問答だ。
悪戯仕掛け人たちがセブルスにちょっかいをかけて、エバンズがセブルスを助けて、その様子をポッターたちはニヤニヤ笑いで見詰めてて

(ねぇ、なんで分かんないの)












たまたま授業が私だけなかったから、湖に行ってみた。
いつだったか、今日みたいに天気の良い日にあのセブルスでさえ図書館から外に出て本を読んでた。
私の授業が潰れたってことは、彼も授業ないんだもの。
(下心丸見え?仕方ないじゃない、恋してるんだもん)


「、いた……セブルス!」


本の文字を追う目が私に向けられた。


「ラッキーだったよね、占い学潰れて」


彼の横に座りながら話しかけたけど、曖昧な返事しかされなかった。
まあ無愛想を体現してるような子だから予想済み。


「………あの、さ」


柄にもなく、体操座りで小さくなってみる。
流石のセブルスも怪訝な目で私を見て、本を閉じて地面に置いた。
「………あの、さ」


柄にもなく、体操座りで小さくなってみる。
流石のセブルスも怪訝な目で私を見て、本を閉じて地面に置いた。


「“汚れた血”と交わるからセブルスはポッターたちに狙われてるんだよ」

ああ、もう、素直になれない自分が嫌になる

「………“汚れた血”とは誰のことだ」
「…エバンズよ」

違う、そんなこと、本当は思ってない

「ポッターはエバンズに惚れてるわ。セブルスにちょっかいかけることは彼女と話すきっかけ作りになってるのよ」
「そんなこと…」
「相手はポッターよ?」

そうよ、虐められるの嫌でしょう?
リリーさんと接点がなければ貴方ばかり狙われないわ

リリーをだしにして、デメリットしか言わない私。
ホントに狡い。
スリザリンの代表者になれるわ、きっと。
(こんな自分、)

思ってることと、口から出る言葉がちぐはぐだ












しばらくして、セブルスがリリーに“汚れた血”って罵ったらしい。
これで、彼は彼女に嫌われた。
弱みに付け込むなら今だと思った。




「おはよう、セブルス」
「………名字…」


チラリとグリフィンドールのテーブルを見た。

それでも貴方は、


今日も貴方の瞳に私を映さない

いつだって、そこには彼女

(不毛な恋だって、分かってた)

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