※10年後編終了的な
※ボス生き返ってますみたいな





まんまとイタリア本土の白蘭の元でしくじってから数日、目を醒ますと、捜しても捜しても見付からなかった彼が「あ、よかった起きたんだね」と笑って来た。 素直に胸を撫で下ろすほど、愚かになったつもりはない。

バキィっ、と綺麗に頬に一発ストレートが入った。 避けようと思えば避けられた拳だったが、甘んじてそれを受け入れていた。 それが解っているから尚更腹立たしい。

「非常に不愉快です」

あいたた、と頬を抑えながら突っ伏していた床から起き上がった男に向かって言葉を投げ捨てた。

「そんなに暴れるんじゃないよ骸、つい最近まで死の淵さ迷ってたんだぞおまえ」
「かく言う貴方は死んでましたがね」

彼を殴った側面の指が痛かった。 存在がそこに確かにある。

「………死んでも、よかったんですよ」

前髪を掴んでついでに顔を隠した。 こんな情けない表情、見られてたまるか。

「弔い合戦、なんてガラじゃないのにね」

尻餅ついていた床から立ち上がって白いスーツについた皺を軽く叩いて伸ばしていた。
顔を、見られたくないと思っているというのに、それを知ってか知らずか覗き込んでくる。

「どうして雲雀恭弥が知っていて僕は知らされなかった」

噛み付くようにほえかかると肩をすくまれた。 理由などないということか。


くやしい くやしい


胸に靄がかかったように訳の分からない内側からの圧迫感が心臓を苦しませる。 言葉にするならそれでしかない。

「俺、案外おまえに好かれてたんだな」

へら、と笑った顔からはそんな安い言葉だけが飛び出て来た。
意味を解した瞬間、顔から炎ではなく火でも出たかと思った。

「まさか骸がそんな行動に出るとは、あんまり思ってなかったんだよ」
「少しは思ってるんじゃないですか」
「少し、ね」

いくらか低い身長のくせに首に抱き着いてきたお陰で少し前のめりになる。

「ごめんな、骸」

彼の声が耳にかかる。 息を肌で感じた。
そこに彼がいる。
ここに彼がいる。

この腕の中に彼がいる。

「……もう、何も言わずに僕の前から消えないで下さい」
「善処する」

そんな微妙な答えに苦笑するしかない。
だけど今の彼を感じるために今一度腕の中にいる彼を強く抱きしめた。





ジュネスに捧ぐ徒死
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