「いいかぁ、てめぇら。人という字はお互いに支え合って成り立っています。」


だらしない声がいつもは喧しい教室に木霊した。


「しかし、どう見ても左の奴は楽をしています。」


某有名教師顔負けの授業かと思いきや、とんでもない事を言い始める。


「皆さんには、縁の下で力持ちになろうって奴よりも、楽したいと思ってる奴の方が多いだろうけど・・・」


男の名は坂田 銀時
  国語教師のクセに白衣を纏う変な先公


「まぁアレだよアレ。まぁ頑張れ。」


何だそのグダグダ感は!!!


オレはただただ溜め息をつく。

携帯を開けたり閉めたりしていると、ついに電池が切れてしまった。

「あっ」

「ほれ見ろ、多串君。先生の感動的な話を真面目に聞かないからそうなるんだぞぉ。」


お前のどこに感動出来るんだ!


「勝手に言ってろ。」


睨みつけてみるが、テンパはにっくたらしい目でこっちを見つめ、

「天罰なんだぞぉ〜」

 と、言ってくる。

まじウゼェ。




それでも、



なんであんなんにオレは惹かれちまったんだろうか―



きっとこの気持がバレたら、周囲が冷やかすだろう。

沖田なんてそれをネタにして何をやらかすか分からない。



だから



いつも呆れたように奴を見る事しか出来ないんだ。





   ―――教室では




「よぉ、先生。」


いつもは閉まっている屋上には奴がいた。

テンパの髪が風に更にモジャモジャにされている。


「おぉ、多串君。ダメだぞぉ、屋上なんかに来ちゃぁ。」


「先導者はテメェだろ。」


「・・・まぁそうだな。」



銀時はふっと笑い、ふかしていた煙草をまた口にあてた。


「風つえぇなぁ。」


奴の目は相変わらず何を映しているのかさっぱり分からない。



「おい、銀時。」

「こらこら、先生に向って呼び捨てはないでしょ。」



煙草の火を消して、奴はオレの方を振り返った。



「何?多串君。進路の悩みだったっけ?相談内容は。」

「・・・あー、はい」



確かにオレはそう言っていた。

まぁ、ほとんど嘘で、少し真実…かもしれない。



銀時はピラ、と進路希望調査の紙を見ていた。

多分、オレの。



「んー、別にこのままでいんじゃね?警察学校だろ?」



なんて適当な奴なんだろう。



「いや、なんつーか、進路というより、将来についての話っつーか・・・」



流石に嘘が辛くなってきて、それを誤魔化すためにボリボリと頭をかいた。



「へー。で、何?」



少し息が詰まった。

奴を呼び出す理由はこれ以外有り得ない。




「銀時」

「だァかァら、先生を敬いなさい、君。」

「銀時」

「はいはいはい。何だね、多串君。」





「好きだ。」






一世一代の告白。



「・・・は?」


腑抜けた面が本気でムカツク。

人のかけなしの勇気をソレで片付けるか、この男。


「誰が?誰を?」


とにかくイライラした。

返答さえもが嫌になる。



オレは奴に向って踏み出し、襟首をつかんで答えてやった。



「オレが。お前を。」



「・・・へぇ〜・・・って、それマジ?」


「悪いか。」




「いや、好き嫌いは人の勝手だとは思うけどさぁ・・・」



またムカッとして、衝動的に唇を塞いでやろうとした。


「ちょっ!おぃ、待てって、コラ!!」



奴の手がそれを防いだ。

あぁ、思い通りにならない。

ホント、腹立つ。



いつもよりも凄みを加えて睨むと流石の銀時も少し臆した。


だらしないワイシャツのおかげで腹にあっさり手を伸ばせた。


緊張で冷たくなっていた手は体温で温まり、逆にされた相手はビビッてしまう。

当たり前の事だな。



「・・・っ 多串! やめろって・・・」


止めるわけがない。

こっちだって盛りな年齢なんですから。

・・・設定上(笑)



「・・・っ土方ぁ!!!」



ゴツゥンと頭蓋に響いた。

それは銀時の・・・肘鉄。



オイオイオイ、そりゃないだろうがよ。





 
思わず頭を押さえてしゃがみ込んだ。

「・・・ってぇ〜っ!!」


「先生相手に調子こくからだ。」



銀時はいけしゃあしゃあとそう言ってのけた。



「校内暴力で訴えるぞ・・・」


「うわー、やめて。オレまだ長谷川にはなりたくねえんで。」



因みに長谷川は教室で「良い仕事ねぇかなぁ」といつもぼやいているおっさ・・・男子生徒だ。



オレは立ち上がり、フェンスに肘をついて、街の景色を見下ろした。

銀時はそんなオレを目で追っていたが、気にも止めなかった。




「はぁーあ。・・・やっぱダメだったか。」




覚悟をしていたとは言え、多少なりともショックだ。


銀時はオレの隣に来て、フェンスに寄りかかった。




「やっぱ、男同士はキモイよなぁ・・・」


「そだね。多串君。」



「・・・・・・・・・」



「でもね、先生はそんなんも自由だと思うよ。」


「・・・ホントかよ・・・」


「うん、ホントホント。」




真面目なんだか不真面目なんだか・・・

二回同じ事を繰り返したらウソなんだってよ?
CMであったよな、そんなヤツ。



「恋愛スタイルだって、自由だよ。
 ただ、少しは相手を労わってやんねえとな。」



そう言って、銀時は「もっと大人になれよ」と、オレの頭を撫でた。

思いっきしガキ扱いじゃねーか、この野郎。

ダメ大人の代名詞のくせして。



「それにね、男同士だって、キモイとは先生思ってナイから。」



ちょっと、希望が見えた、気がした。



「ちょっとねえ、先生、糖尿気味だからさぁ、『生徒と先生の禁断の恋』なんてやってたら、スリルあり過ぎで身が持たないわ。」


「・・・いつなら、いいんだよ」


「んー、そうさなぁ・・・」



銀時は新しい煙草に日をつけて、一服し、突然オレにキスをした。

あくまで触れるだけの。



「・・・ニガ」


「だろう?その大人の味が分かったら・・・かな。」



奴はふう、と煙を吐き出した。

それは青い空に溶け込むように消えていった。




「それまで我慢しとけよ。」


「・・・自分からキスしておいて。」



すると、銀時は、すごく、綺麗に笑って言ったんだ。



 学校(ココ)では先生(オレ)がルールなんだよ



今まで怒ってばかりだった自分が少し恥ずかしくなった。




















改行が多いぞ、昔の私。
土銀好きです
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