「メリークリスマス!」

家のインターホンが鳴って出た瞬間、クラッカーを持って待ち抱えていた髪型はちょっと、アレだけど顔だけは良い少年がにこやかにそう言い放ち、パァンッと鳴らした。
覚悟もなく至近距離でそんなことやられた綱吉からしてみれば堪ったものじゃない。

「…おまえほど、その台詞が似合わない奴、なかなかいないよ」
「褒め言葉と受け取って良いんですね」
「どこがっ!!!?」

やり取りをしている間に上の階から ギャハハ と声を上げながら牛モチーフなのとチャイニーズな子供が降りて来た。

「今、すごーくパーンッって鳴ったもんねっ!爆発?爆発?」
「クフフ、これのことですかね」

骸はコートのポケットからまたクラッカーを取り出してランボに見せた。

「ってゆーか、まだ持ってたのかよ!!!?」
「にゃははは、ランボさん、これもーらいっ!」

ピョン、と跳びはね、骸の手の平からクラッカーを奪ったランボはイーピンに見せびらかす為に、やり取りを見ているだけだった彼女の元に駆けて行った。
骸は綱吉の反応になのかランボのあどけなさなのか理由はハッキリしないが、クフフ、と目を細めて笑った。

「……まあ寒いし、家入れば?」
「いいえ、すみません、出来れば、外に出たいです、綱吉君と二人で」
「寒いのに?」

どうでしょう、と気弱に眉を下げて問う人間を足蹴に出来ない綱吉はチラと嫌だなーと思い頭をかいただけで「コートとってくる」と一端、家の中へ引っ込んだ。

「でも寒いから、玄関の中入って待ってて」
「分かりました、ありがとうございます」

寒さを極端に感じていた鼻筋をつまむとやはり相当冷えていた。

「ねーねー」

足元にランボがクラッカーを振りながら寄ってきた。

「これ、どーやったら爆発すんの?」
「筒をしっかり持って」

骸が宙をクラッカーに見立てて説明を始めるとランボはそれに倣ってギュと握った。

「しっかり引く!」
「ランボさん引いてるもんね!こいつボロなんだもんね!」

おやおや、と首を捻った。子供の力では難しかったのか。

「何を言ってるんです、君なら出来ますよ」
「えーーー、ホントに〜?」
「ほら、もう一度」

ふん、とランボがクラッカーの紐を引くとパァンッと音が鳴った。
まさか鳴るとは思ってなかったらしく、大きく尻餅をついて、痛かったのか音にびっくりしたのかは分からないけれども泣き出してしまった。

「泣くようなことじゃ無いでしょう!」

どうしよう!と悲痛の叫びを帯びてオロオロとランボをあやし始めた骸は綱吉が早く戻らないかと思い階段を見ると、どう見ても結構前からそこにいたらしい彼がいた。

「骸ってさー…意外と」
「そ、そんなことは良いですから!」

助けて下さい!と目が訴えている。
プ、と笑い、ニヤニヤ笑いをしたままその場から綱吉はランボに呼び掛けた。

「ランボー、リビングにあるツリーの下にサンタさんからプレゼント届いてたよー」

ぴた、と涙がとまり、ランボは綱吉を見た。

「知ってるもんね!ランボさん、昨日サンタの奴見たんだもんね!」

そう言い残してランボはリビングに駆けた。
それを見送ってから綱吉は階下に降りて靴を履いた。

「まじで意外すぎる」

しばらくは笑えそうだ、と言いながら外に出た。

外は確かに、寒かったのに顔だけは真っ赤だと思う。ネッグウォーマー付けてて良かった、少し、隠せる。

歩いている途中フ、と綱吉は上を見上げた。

「……雪?」

 うおー、すげーロマンチック!

な!と骸に同意を求めると申し訳なさそうに笑い「幻覚です」と呟いた。
なんだよ、と口をすぼめると骸は「プレゼント持って来てなかったので」と呟いた。

「それだったらオレもじゃん」
「今、一緒に居てくれてるでしょう?」

 それだけで充分です、

「………はっずかしい奴!」

顔を真っ赤にさせて綱吉はそう吐き捨てた。

公園に差し掛かり、半歩前を進む綱吉が園内に入って、ブランコの回りを囲う低い柵に座ると骸はゴソ、とまたポケットからクラッカーを取り出した。

「綱吉、君」

パァンッ

「好きです、大好きなんです」

矢継ぎ早にそう言って、綱吉が目を丸くするのを見て、言ってしまった、と顔を赤く染め、羞恥からか身体が煙に包まれて、骸は消え、一回りも二回りも小さな少女が骸のいた場所から現れた。

「………ボス、」

かぁっ、と頬が染まったと分かった為、咄嗟に手で口元を押さえて、さりげなく頬も隠した。

「…これ、骸様から、だよね?」

渡されたのは、最後に鳴らしてたクラッカー。
出たのは音だけじゃなく、口から赤いバラに見立てた造花が一輪。

「………ホンット、あいつ、気障だよ、な」

まだ雪、降ってっし

クロームは首を傾げて空を見た。

「……幻覚、じゃない、」

え。と綱吉が顔を上げるとクロームはふふ、と笑ってクラッカーを手渡した。

「メリークリスマス、ボス」
「メリークリスマス、ねぇ、クローム、骸に伝えて欲しい言葉があるんだ」
「うん」
「、    って」




この後、わたしは、二人だけの間でサンタになった



「これ、骸様、一生懸命選んでたわ」
「そうなの?」
「100均で」
「安っ!!!!!!」
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