カチリ、と冷たい音が静寂を破った。
まだ見終わってさえいない書類に囲まれ、目を通して良しとすればサインを、止しとすれば破棄をの作業中、訪れる人も減る日も殆ど没しかけている夕方だった。
それでも、ボンゴレの]代目はまったく怖じない。

さすが俺の生徒だ、と拳銃を]代目の額に向けている男がほくそ笑んだ。

「久しぶりだね、リボーン」
「あぁ、そうだな」

穏やかな会話の空気は一向に張り詰めたものから変わらない。
それでもツナは目線を書類から離そうとしなかった。

「仕事?」
「まあな」

ツナが]代目に就任した瞬間、家庭教師はお掃い箱となった。
残留を望まれたにも関わらず、彼は口端を上げて、帽子を指ではねながら『俺を誰だと思ってる。超一流のフリーのヒットマンだぞ』と言い残して去って行ったのだ。
そして職業柄、たとえ実際に合い見えることは無かろうと、少しくらいは活躍を知ることはできたし、元気ならそれでいい、と思っていた彼だったのだが。

「誰の依頼かな?」
「クライアントの情報は漏らしてはならないんでね」
「ふーん……で、どのくらい積まれたわけ?」
「SSランクの3倍」

わぉ、とどこかの先輩紛いな声を上げ、流石のツナもそれはお手上げだ、と身振りをし、初めてリボーンを見上げた。

「その倍出すからやめろ……って言いたいケド、そんな大金出せないや」

残念、と言ってツナは笑った。

「でもまだ受け取ってないよね?」
「半分の依頼料だけだな、今んとこ。終わったら成功料として残り半分が振り込まれることにはなってる」
「じゃ、俺はSSランクの3倍を依頼料として払うよ」

ニッコリ、と笑うツナに向かって「ほぅ」と目を細めた。

「さっき無理だって言ったばっかりじゃねーか」
「…残りは金じゃないよ」

ペンを置いて豪勢な椅子から立ち上がりゆっくりとした足取りで拳銃を向けている相手に向かって歩み寄り、向けられる武器を避けて抱きしめた。


「 俺の隣 」


想定外の行動と言葉に一瞬、言葉を詰まらせた。

「獄寺が泣くぞ」
「隼人は俺の右腕だよ、リボーン、おまえは俺の横に帰って来なきゃならないんだ、沢田綱吉のとこ、に」

ツナの手がリボーンの肩に置かれ、あやすように優しく叩いた。

「こんな仕事、しなくて良いから」


あ の 平 和 な 日 々 に


「戻っといで」

リボーンが押し黙り、ようやく出た言葉はいつも通りだった。

「……ダメツナが」
「うん、こんなんじゃ俺、いつまで経ってもボスなんかなれないよ」

リボーンがツナを抱き返した。






「おかえり」

カターン、と銃が床に落とされた音がした。



























突発的
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