そよそよそよ
今の風を音で表したとすればそんなところだろうか。
優しい風とそれに遊ばれる緑緑とした草花を直に肌で葉は感じていた。
ポカポカとした陽気。
それに草むらに寝転がったこの体勢。
これはいかにも今からにでも眠れるだろう。
ファイトの息抜きとしては最高の場所だ。
無人島にもこんな良い場所残ってたんだな、
太陽の陽が閉ざされたのは、単に雲がそれを隠したのではない事ぐらい、目を閉じていても分かった。
「な、お前もそう思うだろ。」
ニッと笑うと、上から人が笑ったような雰囲気がした。
「そうだね。」
よく心を読んだ事が分かったな、と軽く誉めると葉は誉めるなよ、照れるじゃねえか、と軽く交わした。
「てゆうかさぁ、無防備過ぎない?葉。どこにいつ葉の命を狙ってるかもしれない輩が現れるかもしれないのに。」
「えー。」
ハオが忠告をしても、葉は抗議の声を上げて、「そんな事ねえよ。」と笑った。
「座らんのか?」
「いや、お邪魔させてもらうよ。」
葉が寝ている隣にハオは座り込んだ。
「はー―、やっぱり自然はいいよなぁ。」
「ジジくさ。」
「いいじゃねえか。」
「まあね。」
頭上をすぎ行くは、どうもその様には見えない青々とした空とそれをくり抜いたかのように白い雲だった。
「な〜んか、ゆったりとした気分になるだろ?現代人のオイラには大切な事だと思うんよ。」
「は?」
「ストレス社会。」
「・・・・・・」
ハオは思わず突っ込もうとしたが、やめておいた。
勝手に言わせておこう、と思いながら。
「いつだって葉はゆったりしてるんじゃないの?」
ふぅ、と息をついて、もう一度空を見た。
ふいに昔の記憶が戻ってくる。
嫌な嫌な醜い記憶ばかり。
「・・・ハオ?」
どした?、と葉は上半身を起こしてフリーズしたハオに心配そうに尋ねた。
「ねえ」
「ん?」
「もし地球が滅びるのが分かったら、葉はどうする?」
「うえ?」
もし
もしも
ここがなくなったら
「・・・もし?」
う〜ん、と葉は頭を捻っていた。
ない頭を絞ってもなあ、と自分で思ってしまっている事から、いまいち真剣には考えていないようだ。
「・・・まあそんな事・・・そん時になったら考えるんよ。」
結構読みやすい答えにハオは思わず笑った。
「なんよ。」
「いや、葉らしいなあ、と思ってね。」
葉はハオの表情を察したようで彼の頭をポン、と撫でた。
「・・・お前と違って何思ってんのかなんてオイラには分からんけど・・・なんか、思い出したんよな?嫌な事。」
「・・・うん。」
体の力を葉の方向へ傾け、彼の腕の中へ受け止めてもらった。
葉は一瞬驚いたようだったが、すぐに慣れてしまうと、絶えず優しく撫でてくれていた。
「・・・僕がさぁ、・・・麻倉から離れて・・・世界中を回ってたときね・・・」
空は
空はこんなにも
青くない
ただただ、
赤
持ち霊の色じゃない。
人工的に作られた炎
人工的に作られた焦土
人工的に殺られた人間
大人子供男女老人幼児健常者貴族奴隷
そんなもの関係なく。
背の低い当時のハオからすれば
赤く醜く
何故
何故
何故人は血を流すのか
理由なんてあるのか
理由なんてあっていいものか
あっていいものか?
「・・・戦争?」
「・・・うん」
葉は黙って何か考えていた。
「お前もマタムネも・・・そういうトコ、見てきたんだな。」
「何時の時代だってそんなもんさ。」
歴史は繰り返される
「でも、さっきの『もしも』ってさ。」
葉が話をぶり返した。
「うん?」
「きっとさ、大丈夫だと思うんよ。」
「・・・何で?」
「お前もだけどな、きっと皆が皆それを食い止めようって頑張ると思うんよ。ホロホロも、蓮も、オイラも、皆、みんなな。」
頑張れば、力を合わせれば、なんとかなるとは思わんか?
沈黙を破ったのはハオの押し殺したような笑いだった。
「・・・人がマジメに語ったってのに・・・」
「ごめん、ごめん」
確かに、ね。
彼らは「諦める」というコトバを知らなかった
彼らには「信じる」というチカラが備わっていた
彼らには、彼ら人間には
チカラがあるのだ
-fin-
<アトガキ>
・・・けっこー重めぇ〜なネタでした。
しかもこれ多分中二の頃のノートから発見したモノなんだよね・・・。
ワケ分からん・・・。
まぁ、昔の作品(ちょっとは加工したけど)だったので、非常にかわいい(?)葉さんが存在してますね。
・・・実は続きが存在します。
葉さんの末路(とまでは行かないけど)を是非ともご覧あれぃ♪
因みに、無性にシェークスピアって気分なので(なんじゃそら)いつもとはサッパリ文体が違います。
-----------------------------------------
「で、ハオはどうするんよ?」
「へ?」
「だから、もし…」
「・・・あぁ・・・」(考え込むハオ)
「(ワクワクしながら)・・・何?」
「そうだねぇ・・・『後悔』・・・したくないから、そうならないようにする。」
「おぉ・・・なるほど・・・(納得する)」
「だろ?(笑って葉を押し倒す)」
「・・・何よ(冷や汗)」
「『後悔』」
「うん・・・」
「したくないからさv」
「・・・おいっ!!何も今日明日にホントに無くなるワケじゃないんよ!(押しよけながらも敵わず)」
「うんv でも、「あーぁ、どうせならあと●回葉とヤっとけばよか」」
「わーわーわーっっっ(ハオの言葉を遮り)!!!」
「ね、葉・・・・・・(ムード意識。耳元に唇を当ててやる)」
「(ゾワっ[寒気])は…放せ〜〜〜っ」
「嫌だね(子供のように)」
「こ・・・んの・・・っ(あそこキーック!)」
「っっっ!!!(声にならない痛み堪え)」
(葉、逃走)
「・・・覚えてろ・・・葉の奴・・・!」
-*-*-*-*-*-*-
ハオは次にあった時は寝かせてやらないと決意し、もう一度、空を見上げた。
この自然を守るのか
うん、空も悪くない。