天井の木目を目で追った。
チク タク チク タク チク タク
時計の秒針が奏でる音が耳に響き渡る。
( ……眠れん )
ごろ、と寝返りをうとうにも、葉の左側には何故か(主にノリで)未来王と称する敵、最近分かったが実は兄だとかいうハオがいるため、嫌な緊張が走り、目には入れたくないし、背中も見せたくないので何ともできなかった。
「もうすぐシャーマンファイトも終わる」
眠れない葉を分かって、ハオが口を開いた。いきなりだったため葉も少しは驚いたようだった。
「おまえたちは、キングになる僕を止めようとするんだろう?」
「…………おぉ」
隠しても無駄だと分かりきっている。だから葉は素直に頷いた。
くすり、とハオが笑みを零した。
「葉はいいね、素直で」
「……………なぁ、」
緊張して仰向け以外の体勢を取れなかった葉がハオの方向を向いた。
「……最強の持ち霊を手に入れたハオが最強の状態のオイラを喰う、って、どういうことだ」
「…………そのままの意味だよ」
「ごまかすなよ」
葉の瞳がハオを貫く。
真摯な瞳にハオはごまかしきれない、と即座に判断し、上半身を起こした。
温もりかけていた身体が外気に触れて急に寒さを感じた。
長い鼻息をしたハオが面倒くさいと思ってるんだとしても真相を聞こうと葉も起き上がって話を続けた。
「オイラを、殺してSOFに喰わせる、ってなら分かるんよ? でもなんか……ニュアンスがおかしいから」
「葉を殺してその魂を僕が喰らうんだよ」
「………おまえ、それが本当なら人間なんか?」
「……さすがに無理があったかな」
「かなり」
ふふ、と微笑んだハオは立ち上がり、半開きになっていた白色透明の窓を開くとこまで開けた。
風がふわりと舞い込んだ。
「おまえは、茎子の腹でうっかり分裂した僕だ」
「…………なんか嫌だ」
「おまえが嫌がっても僕はそう思ってるんだよ」
窓から夜の暗闇のなか、木々が揺れているのが薄ぼんやりと見えた。
「さすがに、その分裂した組織や力を僕自身のモノには出来ないよ」
サッシに手を乗せて身を少し乗り出した。
「だから、力ずくでおまえを僕の配下にする」
「………ならない、んよ」
「わからないよ、全知全能の霊が僕の手元にあるんだから」
「………オイラは、ハオに味方することは出来ない」
断定的な言い方をした葉の方を向いたハオに駄目押しで「ならない」と少しキツイ目で対峙した。
ハオは目を閉じて薄ら笑った。
「………分かってるよ、葉がそう言って、そう思ってるなんてことくらい」
風がハオの長い髪で遊んだ。
「葉はそれで良いんだ」
理解が出来ない、と葉の眉間に皺が寄る。
全面否定はしない、でも自分の意見は曲げない
ありのままを受け入れるから恐れることを恐れない
強い魂は力になる
仲間にしたい
だけど信念に反することは絶対しない
その抵抗に気持ち良いものがあった。
「そのままの葉じゃないと」
嫌がられることは好きなはずがない。
だけど
「………意味が分からん」
「あ、今日は満月だよ、葉。月が綺麗だ」
「………ますます意味が分からん」
葉がハオに靡くことはない。
それはハオにとって決して悲しいことではない。
その悲しみを例えるならば(まるで、風)
葉が横顔に触れる髪を邪魔そうに耳にかけた。
こっそりとハオもその真似をした。
優しい時間が 頬を掠めた。
ハオ葉と分類して良いのか、これ。