※アニメの終わりの続き
※葉死亡後
※仏ゾーン:千←サチ
近くのスーパーで買ってきた果物を脇に置き、手を合わせた。
仏壇に飾る写真が一枚増えていた。
シャーマンだからこそ霊の存在を認知し、尚且つ、その虚しさと、そこに居るだけで一般の人間の持つ認識による疎外感をよくよく分かっていた“彼”は愛する妻子を残してでもいってしまった。
そのおかげで、懐かしい面々が、片田舎な元民宿、現旅館(強調)である炎にパラパラと集った。
“彼”がいない分、空元気だったけれども。
人がいなくなった頃を見計らったかのような時間に、またインターホンが鳴った。
「お久しぶりです」
鳴らした人物を見たアンナは驚きで少し目を見開いてしまった。
「あんたが、来るのは意外だったわ」
「あら、そうですか」
老いてなお美貌を保つ、ある意味、霊より怖い人物はあの頃と違い、一人で訪れた。
アンナは身を引き、訪ねて来たサティを家の中に引き入れた。
「拝んでも?」
「ええ、そこの部屋よ」
サティが仏間に入ったのを確認し、アンナはお茶をいれる為、台所へ赴いた。
チーーーン、と鐘の音が響いた。
ぐ、と詰まるものがあったが、平静を取り戻し、茶菓子などを持ってサティのところへ戻った。
ありがとうございます、と丁寧に礼を述べられた後、一緒にお茶を啜った。
外から、息子と面倒を見ている竜の声が聞こえた。
「麻倉葉…惜しい方を亡くしましたね」
「あのバカ…ハオに強力な呪詛をかけられたこと、私たちに言わないからこんな目になったのよ」
“あの”時消えた、至上最凶の陰陽士、ハオの最期の力業は長い年月をかけて葉の身体を蝕んでいたらしい。
葉は周りに心配かけまいと呪詛返しも、黙って行っていたらしいが攻防を凌ぎあい、最後の最後に屈したらしかった。
「でも、貴女がまだ元気そうで、安心しました」
にっこり、と笑いかけられたアンナは、「これくらいでへこたれて堪るもんですか」と気丈に笑い返した。
「私は、昔、日本からインドに渡った際、仏教よりもヒンズー教を先に目の当たりにして、大変ショックを受けたものです」
サティは湯飲みを置くと合掌をして目を閉じた。
「夫を亡くした妻が亡夫が燃やされている火に飛び込み後追い自殺……それが風習化されていたのです、今ではジェンダー問題の観点から法律で規制されていますが、それでもまだ、相手を大切に思えば思うほどに」
アンナは黙って茶を飲む速度を緩めサティを見つめた。
サティはそれを知ってか知らずか残りの茶を飲み干し、ニッコリと微笑む。
「あまりにもお二人は仲睦まじくしていたから、余計、心配でした。しかし、今のあなたを見て安心しました」
アンナは軽く口元に笑みを浮かべた。
「それでは長居は無用ですので、お暇させて頂きますね」
「あら、食事くらい出すのに」
「お気持ちだけで充分ですよ。それに私にもやるべきことはまだたくさんあるのです」
サティを見送りにアンナは玄関先まで後ろを着いて行った。
靴を履くと、サティはアンナの方に向き直り、会釈をした。
「それでは、ごちそうさまでした、お見送りはここまでで」「さっきの」
アンナがサティの言葉を遮る。
「その風習、知ってるわ。………あんたは、何を思ってそんな名前を名乗ってるの?」
そう尋ねるとサティの側に少年の姿が現れた。
なんでも見透かしたような目をしている。
見た目以上の強すぎる力を持っていることは明らかだ。
サティは傍らの少年をチラリと見、目が合うと微笑み、その笑みをアンナに向けてその問いに応えた。
「さぁ」
「………応えないならそれでいいわ、不粋なこと聞いて悪かったわね。それとありがとう」
「いえ、こちらこそ突然押しかけてすみませんでした」
今度こそ本当にサティは帰路についた。
その背中を見て、アンナは物悲しさでざわついた胸を押さえた。
外で遊ぶ息子の声が聞こえた。
自分はまだ良かったのかもしれない、と思った。
お互い想い合えた仲だったから。
もしかしたら彼女はきっと、もっと悲しい恋をしていたのかもしれない。
想いは叶わない相手だったのにずっと想い続けた、否、想い続けているのかもしれない。
だって、そうでなければ
「決まった相手以外には見向きもしない、」
貞淑な花嫁
「………アンタも、なのね…………サティ」
シャン、と鐘の音が響いた。
初代に事情を聞きかい摘まんで何となくサチを知ってる女将
サチ=さっちゃんらしいのに完全版のキャラクター事典ではSACHIではなくSATI表記だったことから妄想
SATI:ジェンダー問題が多い印の風習