久しぶりに歩く街は相も変わらず、ちかちかとネオンで輝いていた。帰りがてらに見える人々ははっきり言って、感じ悪い。

夜になりかけた、その場所には、子供の居場所なんかない。

こちらを見て笑い声を上げたカップルを一睨みして、とにかく帰路へ急いだ。



「よぉ、麻倉ぁ」


その声を聞いた時、思わず、「またか」と溜め息を吐きかけた。


「…なんよ、またアンタか」

「またってなんだ、またって。」


その男は、オイラの後ろをついて来た。


「やっぱりねー、今日はBobのCDの発売日だから、絶対会えると思ったー。」

「お前はオイラのストーカーか。」


相手はシルバ……なんだっけ。

まぁ、名前っつーか、愛称はシルバだ。

会えるも何も、こいつは毎日毎日オイラの家に来てる。

毎日が家庭訪問だ。

もっとも、一人暮らしだから家には誰もいないのだが。

それにしても、物好きな奴だと思う。

担任だからと言って、ここまで一人の生徒に肩入れしても良いものか。



「おじゃましまーす。」


良いトコ住んでんじゃん、と誉められた家庭訪問初日ははっきり言って、ウザかった。

その評価は今もそんなに変わってはいない。



「ちょっと待ってろ、お茶いれるから。」

「あ、お茶請けは煎餅希望。」

「…随分、図々しい客だな」





「でさー、その後、小山田がさー・・・・・・」


片手に湯飲み持ちながら、ノンストップで喋り続ける。

どこから、そんなに話題が出て来るんだ、と、オイラは毎回感心してしまう。

ってか、女性ホルモンの方が分泌されてんじゃねえの?

男性ホルモンはそんなに話したい事が脳内でまとめる事が遅いっていうしな・・・



いや、でもコイツの体は完璧ボディービルダー並だった。

鍛えても鍛えても、細っこい自分とは大違いである。



「おい、麻倉?葉くん、聞いてるか?」

「うえ?」


ボー…ン、と、前の住人が置き去りにしていった古い掛け時計の音が鳴った。


既にPM9:00である。


「さー、そろそろ帰るけー」

「・・・どこの表現なんよ」


とりあえず、玄関まで見送ってやるのはいつもの習慣。

人と唯一、交わりを持つ時間の終了を自分に告げる。


「んじゃ、おじゃましましたー」

「おう。まったくだ。二度と来るんじゃねーぞ。」


毎度の別れの挨拶。

どれだけ憎まれ口を叩いても、めげずに来るシルバが不思議だった。






































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