「…あっ、あの、よろしければ貰って下さい!!」
学校に行ってすぐ、靴をはきかえていたら、真っ赤にさせた顔を下に向けたまま両手で可愛い包装紙に包まれたブツを少女が差し出した。

横にいたアニキに、どーしたもんかと目配せしたら肩をすかされた。

去年までだったら、多分、受け取っていた、んだけれども。



「ごめんな、気持ちだけにさせてくれんか?」



少女が傷付いた、という表情になった。
けれどもすぐにその顔を無理矢理明るいものにして「こっちこそ、無理言ってごめんなさい」と言ってオイラの前から走って逃げていった。

罪悪感がチクリと胸を刺した。



「おーおー、葉くんってば罪な奴だねぇ」



80%の嘲笑を込めて肩にもたれ掛かって来たアニキを うっせぇ と睨み、肩を回して顎に激突させた。

去年と今年とでは勝手が違う。

教室で席につこうと思ったら引き出しに入れっぱなしにしていた教科書やらノートやらプリントやら果ては筆箱の中身までが机の上に散乱している。
ここまで来たらある意味公害だ。


ちなみに、ほぼ似たような状態のアニキは意気揚々とカバンに詰めている。



どーしたもんかと思っていたら、がらりと教室のドアが開いた。


いつもならいる時間なのに今日は少し遅めに到着したらしい。



「はよー、アンナ」



いつも無口な彼女だが、今日はさらに隈まで加わって余計に無駄な迫力が増していた。
しかも返事もろくにしないで席に座りにいった。



《葉がいっぱいチョコもらったからって、アンナが怒ることないのにね》



と授業中、ハオから回し手紙が来た。
返事の代わりに、担当の先生が黒板に文字を書いている隙にその紙を消しゴムのカスを詰めて丸めてハオに向かって投げ付けた。

多分、アンナがオイラに怒る理由はこれくらいしか今日は無いと思う。

アンナは今まで遠くに住んでたけど、今年、オイラたちと同じ学校に転校してきた幼なじみ兼オイラのこれだ。
口に出すとにやけるから絶対言えないけど。


今年はアンナがいる
だからオイラにチョコくれようとする女の子には悪いけど、想いが篭ってれば篭っているほど受け取れ無い。




別にアンナから貰えるって期待してるワケじゃないんだけどな




…………でも流石に今日一日丸々終わるまでアンナと言葉を交わさないのはちょっと嫌だな


光陰矢の如し
授業が終わり帰りのHRも終わった


なのにアンナは一言もオイラと喋らず、そそくさと帰ろうとしている。
ちょっと落ち込むぞ

そんなオイラを見たハオが背中を蹴ってきた。
振り返って睨みつけるとアンナの方向に顎を向けた。

行けってか
分かってるんよ、つーかオイラの女に顎向けんな指差すな





「アンナっ」



昇降口でやっと彼女に追い付いた。

それでも無視して帰ろうとする少女を慌てて押さえるために手首をつかんだ。



「何よ」
「いや、……途中まで一緒に帰ろうと、な?」



振り返ったアンナは頬を赤くさせたままキッとオイラを睨んだ。



「……チョコ、なんか無いわよ」
「ん、別にいいんよ」
「……っ、変、なの」



オイラの手を振り払ってアンナはとっとと歩きはじめてしまった。
急いで靴をはきかえて彼女に並んだ。



「あんた、モテ……」



そこまで言ってアンナは口をつぐんだ。

横目で盗み見してみると寒さ以外からの理由で顔が赤くなってるんだと思った。
可愛いなぁ、なんて思ってると不意に手を握られた。



「………」
「………」



押し黙った空気が白く染まった。



「……葉、時間あるなら買い物付き合いなさい」
「ん、いいぞ」
「、終わったら、パフェぐらい奢るわよ」
「……チョコ?」
「……なんでも良いわよ」



へへ、と笑うと横で おバカ、 と小さく呟く声がした。
照れ隠しが相変わらずうまくない。

ホントは知ってるんよ、作りかけたは良いけど、アンナの事だから失敗かなんかして、オイラに持って来れなかったんだって
その証拠があの隈だな

そういうの全部分かってやっとアンナが可愛いと思うんよ

ハオなんかにゃ絶対分かんねぇだろうな



「なんかデートみたいだな」
「……おバカ……」








ほら、こんななんでもない言葉でも真っ赤になるくらい純情なんだ



happy valentine !
すべてが愛おしくてたまらない


















今年は土曜が14日だから遅チョコってことで★と油断したらかなり乗り遅れた、けど折角なのでup
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