へっぶしょ!!とくしゃみをしてまだ重たい瞼を少し開けてしまった。 うう、さぶい、と両腕を擦り合わせる。

………ん? 布団どーした、オイラ



ごろん、と寝返りをうち反対側を見たらすやすやととてつもないくらい安らかな顔で眠る奴がいた。
条件反射で腹筋に力がこもった。


いやいやいや、耐えろオイラ
昨日、こいつ、オイラたちとこの家に住むことになったんよ。 んで、なんか記憶が変になってるんよ、この男。 そーだ、そーだった。 でもま、とりあえず、



「…………毛布返せ」



葉の分まで巻き込んで芋虫になっていたハオは必死で葉から奪い返されそうになっている布団を引っ張り返した。 寝ぼけてるのか、はたまた起きてはいるのか知ったことではないが、葉は本気でハオに挑んでいる。



「……さ〜む〜い〜」
「我慢しーろー」



だいたい元民宿なおかげで広い上に部屋数もあろうにこの男、“幽霊が出て怖い”と抜かして、さすがに女のアンナやたまおとじゃアレだと言うことで葉と同じ部屋になった。 それでもビビると言い、布団二つきっちり詰めて寝よ、とあの口から出たときの葉の鳥肌具合は凄まじいものであり、丁重に断ったにも関わらず、いつの間にかくっついていた。

なんて腹の立つ男だ

ムキになった葉がぐるぐる自分の分の毛布を巻き取ると、ハオ本人まで着いて来た。



「………あ、ぬくーい」



ごろ、と葉に当たったハオはその手を葉の身体に回して密着した。 抱き枕状態だ。

ピキ、と葉が固まった。



「……は、は〜な〜せ〜〜」
「えーやーもーちょっと」



ふぎぎ、と葉がハオを押し退けようとすると寝ぼけたハオは葉の上に乗っかった。 体重に押し潰された葉は「ぐえっ」とカエルが押し潰されたような声を出し、抵抗する力を奪われた。
まさにその時



「ちょっとあんた達、いつまで寝てん、」



ふすまを開けたアンナが言葉を詰まらせた。

助かった、と顔を輝かせ、アンナを見た葉が見たものは、とかしたはずの綺麗な金髪がメデューサの如くうねった彼女の姿で、「うえっ!?」と驚いてすぐに葉とハオが包まっていた布団をめくり捨て、ハオを葉から剥がし、葉の胸倉を掴んで バチーン と頬を叩いた。



「とっとと顔洗ってきなさいっ!!」



怒ったアンナにビビった葉は頬を押さえながら洗面所に向かった。

しゃこしゃこ歯磨きをしていると、ようやく目を覚ましたハオが欠伸をしながら葉の方へやって来た。

がらがら、とうがいをする葉を鏡越しに見たハオは葉の頬が赤いことに気がついた。



「あれ? 葉、手形ついてるけど、なんで?」




忘れたとは言わせない
お前のせいだ、バカタレ
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