ちょうど証拠品がほしかったとこなんで、
そう言って笑った葉の顔はそれはそれは怖かった。
あの葉があんな顔するとは、ちょっとお兄ちゃんもビックリだよーもー。
例えるならアレだ、はんにゃだ。
“はぁ? ふざけんじゃねーし! 言ってねーよ、はぁ?” じゃないよ、般若だよ。

とにかく、僕を見た瞬間に「そこに直れ。座れ。すーわーれっ」と般若に言われ、で、かれこれ般若をバックに抱え込んだ葉に笑顔で睨まれ続けること数分、この数分、ホントに数分だったのかな、何十分、何時間にも感じたんだけど……時計間違ってない?


「………被告人、ハオ以降、甲は被害者、麻倉葉以降Xの宿泊施設の部屋へ侵入した」


え、なに、その変な言葉は。
そんな言葉知ってるの、我が弟。


「甲はXがいないことを承知で無断で入り、Xの私物を手に取り、それを甲のズボンのポケットに丸めて入れようとしているところをXに押さえられた。甲の罪は何か」
「むざ……」
「有り得ないんよ、この変態」


わぉ。 気迫が増したよ、誰だ、葉をこんな子にしちゃったのは。
はじめにちょっかいかけてた頃はもっとおしとやかな子だったと思うんだけど、回を追う毎にブラック化して……困ったもんだよ、まったく。


「で、遊びは終わりだ、ハオ。 何しに来た」
「葉に会いに」
「なぜ、これをポケットに入れた」
「まだ入れてないよ」
「なぜ、これをポケットに入れた」
「だから、まだ」
「なぜ入れた」


参った。 気迫負けした。


「……いや、ちょっとした出来心で……」
「出来心で盗むようなものか?」
「うん」
「盗むようなものか?」
「……すみませ…」


ちょ
てか、なんで僕が謝らないといけないわけ?
迫力負けしちゃった自分に叱咤したいよ!!
あとでしよっ


「だってさー、葉がいなかったんだもん、せっかく遊びに来たのにさー」
「ははっ、いないことは知っていたはずなんよ」


……うん、いつもの修行時間だからね。
そんくらい、いくら物覚えが悪くても毎日見てるから覚えられるよ。


「……だからせめて記念品を、と」
「だから? オイラには意味分からないよ、なんで、よりによって、これを盗もうとした」


正座した僕と胡座をかく葉の間には、布一枚が置かれていて、葉は“これ”という度に、それを叩いてる。
その白い布のステッチ部分には“麻倉葉”と黒い油性ペンでネーミングまでされていた。


「おまえ、パンツはどんな用途で使われるのか知ってるんか?」
「嗅g……」


おわっ、
危ない危ない
うっかり本音が


「履くために」
「うそこけ、その前に絶対“嗅ぐ”っつったろ」


ぬぬぬ……!
妙なとこだけ鋭い奴だ

ちっ、仕方ない、ここはもう


「別にいーじゃん? 減るもんじゃないし」
「数が減る」
「消耗品だろ? 特別に僕が片付けるだけじゃん」
「おまえに処理を任せるくらいなら、たとえダイオキシンが発生してでもオイラが焼却するんよ」


開き直ってみたものの、ツッコミがどんどん鋭くなってきた気がするよ、うん。

これはもう、逃げるが勝ちだよね。


意識を一瞬外へ向け、スピリット・オブ・ファイアを具現化させ、葉のパンツを掴んで立ち上がった

あたっ、

やっべ足痺れてるし


それでも大陰陽師麻倉葉王、現、未来王ハオの面子にかけて、それを露とも見せない後方ジャンプを見せ付けた。


「これを返して欲しくば、今夜25:00、僕らの基地に葉。おまえ一人で来るんだな」


楽しみに待ってるよ


含み笑いを込めてそう訴えた。
さあ、今夜ホントに葉が来たら何してやろうか

考えただけで……

あ。 やばい、マントに血がついちゃったよ、まったく
そのまえに温泉行って、オパチョに洗ってもらお。













「まん太、どーだ?」
「……バッチリ録画したよ」


当の本人よりもこっそり外にいた僕の方が疲れた。
見た目の話。

「ありがとなー、まん太」

近頃、葉くんの持ち物が消える小さい事件が多発し、事態を受け、笑顔でこめかみを痙攣させた葉くんが頼んで来たのが始まりだった。

「さ、この録画内容を見せてパッチに言い付けてやっか」

軽く伸びをしながら葉くんがそう言って笑った。
ブラックオーラが見えた気もする。





甲はXの所有物を我が物にせしめんと動き、実際、Xの承諾を得ず持ち帰った。
後日、甲はXに対し不承不承の詫びと共に言い訳がましい一言を残していった。


愛のコレクション
が欲しかった、と


むろん、甲がXに成敗されたことは言うまでもない。
ついで、それでも甲はXに対しての迷惑行為を止める気がないこともまた明らかであった。


















2009年、キリ番2009 めり子さま/変態ハオ×葉
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