※葉総受け









「お、5枚になった」
「じゃああれやっておいでよ、葉くん」


アンナにしょっぴかれ、家事中のたまおの申し訳なさそうな顔に見送られながら、まん太を巻き添えにして、夕飯もろもろの買い出しに行っていた。
1000円お買い上げ事にくれるチケットってやつが5枚溜まったからガラガラクジが出来ると言う、年末恒例なあれ。
幸にもほとんど人が並んでいなかった。

「わー、なんかドキドキするな」
「がんばれー」
「おー」

まん太に見送られるや否や、葉は平然とした顔のまま異常な速さでガラガラ、と回し始めた。

「お客さん!壊れますから!ストップ!ストップ!!!!」
「おぉっ!?」

店員に突っ込まれて、回転を止めると穴から球が出て来た。

「あ」
「お」

一瞬の間があき、葉の隣にいたまん太が「何がおこってんだよ!」と球の色を見ようと気合いでジャンプし続けていた。努力虚しく、結局見れなかったが。

突如、ガランガラン、と喧しくハンドベルが鳴った。

「おめでとうございます〜!温泉旅行一泊二日の旅ペア宿泊券贈呈です〜!!!!」
「おおおぉっ!」
「葉くんスゴッ!!」

葉は店員から目録を貰い、まん太と別れ、家路へ着いた。
心なしか足取りもめちゃくちゃ軽い。

「アンナ!見ろよコレ!当てたんだぜ!!」

バッと見せた白い祝い袋には、どう見てもプリンターで打たれた明朝体で『温泉旅行ペア一泊二日宿泊券』と書かれている。

「あら、凄いじゃない」
「葉様おめでとうございます」

うへへーと照れ臭そうに笑い、アンナに買ってきた煎餅を渡し、たまおの夕飯作りの助っ人に赴いたときだった。

「ごめーんくーださーい」

と玄関の方から声が上がったのは。

たまおがパタパタとスリッパを鳴らして玄関へと向かうのを見ながら葉はボリボリと奈良漬けを摘んでいると、突如、首に腕を巻かれて抱き着かれた。

「ふげっ」
「葉ー久しぶりー」

頬を擦り合わされ、かなり迷惑そうな顔をしていた葉にハオは気付くわけがない。
急いでバタバタとこちらに向かう足音の主たちはその現場を目撃した。

「な!ハオ何してやがる!?」
「抱擁と頬擦り」
「………ホロホロー突っ込む前に助けろー」
「待ってろ、葉。」
「待て蓮。オーバーソウルすな」

葉はハオの後ろ髪を遠慮なく抜くつもりで引っ張り、痛みでハオが後頭部を押さえた隙に逃れ、とりあえず無駄に割れた腹を目掛けて足技を見舞い、訪れた友人二人を出迎えた。

「で、なんでまた突然来たんよ」
「いやー…だってな…なあ?」

デヘヘ、とにやけて笑うホロホロ。

「なんなんよ、気持ち悪いぞーホロホロ」

葉は特に深い考えも無く、笑顔という見えにくいナイフでホロホロの傷をえぐった。
はっ、と鼻で笑ったハオと蓮だけは心中、喜色満面だ。

「葉、貴様、俺に言うことがあるんじゃないのか?」
「あ?別にねーけど」
「……!思い出せ!!あるに決まっているだろうっ!」

と、トンガリをニョキッと伸ばされても…と思う葉をよそにトンガリは天井突破!コンクリガラガラン!と音をたてた。
うおぉっ!?と反応している時に電話が鳴った。

「はい、麻倉です」

近くにいたたまおが電話に出た。

「葉様、お電話です、まん太さんから」
「まん太ぁ?」

これ幸いと非常に面倒な3人から離れ電話に向かう。心なしか3人の周りに火花が散っている。

「どーしたんだぁ、まん太ぁ?」
『や……今になって罪悪感が…もしかしなくても、蓮たち葉くんの家にいるよね…?』
「おぉ」
『別れた後に、あの人らに葉くんが温泉旅行券当たったって言っちゃったんだ』
「………あー、だから来たんか、あいつら。ちょっと面倒くさいことになりそうだ」

3人は何故かじゃんけんを始めた。
霊視が出来るはずのハオも交えているのに見事にあいこばかりになっている。ちなみに、決して同じ手になることはない、全員バラバラだ。

『ごめん………ハオには葉くんの情報逐一入れろと脅され』
「最低だな、あの兄貴」
『ホロホロは情報送るたびに北海道ならでは食材送ってくれるし』
「………?ああ、義理堅いもんな」
『蓮はアレ、くれるんだ』

見えなかったが、葉にはまん太の親指と人差し指で円を描いたことが何となく分かり、そしてアレとは金だと気付いた。

「…間違いなく小山田カンパニーの血が流れてるな、まん太」
『一緒にしないでよ』
「いや、充分同じだから」
『もー…ま、頑張ってね』

逃げるように電話を切られた。
とにもかくにも、3人の目的が旅行券と分かった今、葉は3人に告げた。

「おまえらの目的のものはアンナとたまおにプレゼントするつもりなんよ、だから諦めるんだな」
「あら、気が利くじゃない、葉」

傍観していたアンナが口を挟み、葉は「だろ!」と胸を張った。

その後ろで鬼(アンナ)の居ぬ間に葉の家に泊まろうの会が結成され、既に喧嘩も勃発していることに奇しくも気付いたのはたまおだけであり、葉の好意を踏みにじる真似はしたくないものの、貞操の危機を自ら守るものか一人で悩んでいた。



モンシェリー


その一人の為に無駄な波紋が広がる












キリリク789: 華穏さま
葉総受けのハオ贔屓目でギャグ
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