!!レズ的な表現
!!全体的に下品















「昨日さぁ、初めて女の子を抱いたよ」


なんてことない日常。元気な奴らは校庭で走り回る昼休み、私はイチゴオレのストローをくわえながら桑田にそう報告した。それに対し桑田は食べていた焼きそばパンにむせるというナイスリアクションを見せてくれた。模範のような反応に賞賛の気持ちが喉にせり上がるがイチゴオレで流し込む。


「なっ、今なんて言ったお前!!」
「昨日初めて女の子を抱いたって言った」
「意味わかんねぇ…お前レズだったっけ。つーかレズだったんだな」
「レズじゃないよ、私全然興奮しなかったし」
「…意味わかんねぇ…」
「結構可愛い子でね、名字先輩のことが好きなんですーなんてこれまた可愛いこと言うからさ、やってみたんだ。ものは試しってことで」
「どこから突っ込んでいーか分かんねーんだけど」
「フィクションとして聞いてよ」
「フィクションな、登場人物の一人がお前じゃなかったら興奮出来そうだわ」
「じゃあ、仮に私を先輩、後輩を後輩と置こうか」
「おう」
「で、抱いたんだけど、つまらなかった。気持ち悪かった。興奮しなかった。それは何故か。桑田君」
「いや…それはお前が女でその女も女だからだろ」
「いや、後輩は至極気持ちよさそうだったんだ。上気した頬に、俗にいう甘い声。なにより濡れてたし」
「うわ、クソ羨ましい死ね。誰だよその後輩」
「桑田が何回かナンパしてそのたび断られてた彼女よ」
「そんなん何人もいんだろクソが!」
「でさぁ、どこ触っても柔らかーい彼女の身体を見下ろした時にさぁ、ふと思ったんだよね」
「何を」
「こんな非、生産的な行為に意味があるのか」


私は目を閉じて昨日の出来事を回想する。艶めかしく跳ねる身体。嬌声。むせかえる性の香りは背徳感しか生まず、それが劣情に転じることは無かった。それどころか。私はこみ上げてきたものをまたもやイチゴオレで流し込む。桑田はワックスで固めた頭をガシガシと掻き、メンドクセー話だな、と呟いた。


「だから君に話してるんじゃない。ちなみに第二候補は石丸君だ。今から乗り換えてもいい」
「止めとけ、また風紀的教育指導?的なモン食らわさせられるぞ」
「実は私、まだその指導食らったこと無いんだよね。食らう予定も無いけど」
「マジか!!公然猥褻罪みたいなテメーが!!」
「失礼な。君よかましだ」
「いや、それに関してはゼッテーお前の方がマシじゃない」
「いや、それはどうでもいいんだけど。で、アレに意味はあったのかな?私と後輩がセックスしても子供は出来ないし、後輩は気持ちよさそうだったけどさぁ。てかあの状況で興奮しなかった自分がちょっと信じらんない。ショック過ぎ。私EDなのかな?勃起するもん無いけど」
「いやー…それが正常なんじゃねーの?俺も男の裸見ても立たねーし」
「なんであの子はあんなに幸せそうだったんだろうか」
「それは…」
「うん」
「その、あれだろ。好きな人とヤってるーって思ったら興奮するし、幸せだし、立つもんは起つだろ。いやまあ、好きなヤツじゃなくても立つけどな?そこは生理現象として」
「一行でまとめて」
「………そこに、愛が、あったから…だろ」
「…愛、か…」
「いや、知らねーけど」
「……なんて陳腐な」
「うるせーよ」


愛。か。あの行為には愛が無かった。彼女の熱っぽい眼差しはそれを懇願しているようで、それをごまかすように私は彼女を蹂躙した。愛してるの一言でも、言ってやれば良かったんだろうか。しかし、それは嘘だと、愛なんてなかったと気付くとき、彼女はどれくらいの傷を負うんだろう。考えて、寒気がした。私の胸に巣くうのは果てない無関心だけで、そこには歪んだ独占欲の一つもありはしないんだ。


「…あのさぁ、」
「………なんだよ」
「…あの子にさ、悪いことしたかなぁ…」
「……さあな」




モドル