ざわざわと誰かが話している声がする。内容は分からない。ただその中の一人が勝呂くんだということに気が付いた。知っている人の声と言うものはスッと頭に入ってくるものだ。脳内で勝呂くんのことが自動再生されて…先程の出来事が鮮明に頭に流れ始めて私は飛び起きた。その瞬間、


「い゛っ!?」
「アダッ!!!」


頭に鈍い痛み、何かをぶつけたようである。それにさっきおでこに作った傷が響いて痛い。あの化物の…いや、それは夢だったはずだ。涙眼で顔をあげるとそこには勝呂くんと、ごっつい服を着たメガネの人、それに変なファンシーな服を着た人が頭を抑えていた。これは世に言う


「…変態だ」
「ブフッ」


見るとごっつい服を着たメガネの人が吹き出していた。思わず凝視する。すると彼は失礼、とこちらに笑いかけてくれた。ああ、この人イケメンだ。ただ絶望的に私服がアレな、俗に言う残念なイケメンなのだろう。しかし似合っている。流石イケメンだ。


「私…初対面の人間に頭突きを食らわされた上、変態扱いされたのは生まれてこのかた初めてですよ…」
「…?…ああ、その節は…ごめんなさい?というか、どちら様ですか」
「ふふ…しかし面白い…こういう異分子をあの中に放り込んで…」
「フェレス卿」
「おや、すみませんね奥村先生」
「…」
「いや、どちら様ですか?マジで」
「おぉっと!ご紹介が遅れましたね、私この正十字学園の理事長を務めておりますメフィスト・フェレスと申します。以後、お見知りおきを」

正十字学園の理事長を名乗った人はシルクハットをくるくると胸に当て、私に恭しくお辞儀をしてきた。そこでお辞儀をし返してしまう日本人の悲しい性。
理事長…相当偉い立場じゃないか。演技がかった口調に仕草。ふざけた格好。…こんな人がトップでこの学園は大丈夫なのだろうか。


「で…理事長さんは私にどんな用事なんでしょうか」
「理事長さんなんて堅苦しい!私のことはメフィスト、とでも呼んでください」
「メフィスト…さん。で、何故私の部屋にいるんですか?というか…なんなんですか、諸々」


体制的に上目遣いで彼を見ると彼はチェシャ猫のようににんまりと笑った。




モドル