「モトハル、セックスしようか」 「ぶっ」 唾飛ばすなよ汚い、と嫌そうな顔をする名前をモトハルは信じられないような目で見つめた。その視線に気が付いたのか名前が呆れた顔をする。いやいやいやいや、おかしいだろ!どの流れでそうなった! 名前はモトハルのベットの上に座っている。名前が、俺のベットに・・・なんて思うと誘われているように思わないでもないが、モトハルはあくまで紳士らしく、べ、別にお前とそういうことしたいわけじゃないんだからねっ!という態度で名前に臨んでいた。名前の体、大事にしたいから!キリッ!モトハルはそう思っている。実際はヘタレまくって名前に手が出せないだけなのだが。 「あ、あのう名前さん、な、何を言ってるんですか?」 「だからセッ」 「言うなああ!!二度も言うなあああ!!!」 「モトハルが言えって言ったんじゃん」 「おかしいだろ!どうしてそうなった!」 「つーかどうしても今までこうならなかったのがおかしいわけよ、分かる?」 名前がぼりぼり頭を掻きながら、できの悪い生徒を諭すように言った。おかしいだろ!なんで俺が悪いみたいになってんだ!?ああああ!モトハルは叫びながら頭を抱える。 「分からねえ、一つも分からねえ!」 「あのねえ、モトハルだって性欲あるわけでしょ、つーか、無いわけ無いでしょ。さすがにその年で枯れてるって事もないだろうし、彼女が自分の部屋にいてこう、欲情したりしないわけ!?ねえ!手を出せよ!手を!」 「なんで切れてんだよ!」 「モトハル君がぁ、ヘタレて手を出してくれないからかなあ」 「俺はだな!名前を大切にしたいからであって!」 「だまれこのヘタレめ。ファーストキスのとき私より真っ赤になってたくせに、生娘かお前は」 「ううううるさい!」 「この前なんてよぉ、私がわざわざお前のベットで寝た振りしてやったってのにキスしかできないとかお前どんだけだよ!童貞の星だな!」 「お前あの時起きてたのかよ!」 「あたぼうよ、私はマイ枕が無いと寝れないんだよ!それに今日だって、」 「やめろ!聞きたくない!」 「今日、俺ん家に誰もいないんだ・・・。とか意味深なこと言いやがって!誰もいないだったら手ぇ出せや!なんでUNOやろうとか言い出すわけ!?あんた馬鹿?つーか馬鹿だろ!」 「UNO面白いだろうが!」 「UNOじゃなくてモトハルを責めてんの!」 青くなったり赤くなったりしてわーきゃー叫ぶモトハルをじろじろ見てるうちに、名前は思わずため息が出た。そんな名前を見てため息つきたいのはこっちだ!とモトハルは叫んでそっぽを向いて俺怒ってるアピールをしだす。駄目だコイツ・・・何とかしないと・・・!名前はやれやれと首を振った。これは、最終手段を使うしかなさそうだな・・・。 「モトハル君、こっちを見なさい」 「なんかやだ」 「いいから見なさい」 「無理」 「見ろよ」 「断る」 「見ろ」 「・・・」 「・・・・・あれは、私達が小学4、いや5年生の時だったと思うけど、モトハルが隣町の学校の子に一目ぼ」 「その話はやめろおお!!!」 モトハルが話を遮るように振り返るとそこには驚きの光景が広がっていた。名前が脱いでいる。無意識のうちにモトハルは生唾を飲んだ。・・・どうなってんだこれ。そんなモトハルをちらりと見ながら、名前は学校指定のブラウスのボタンを外した。その首には同じく学校指定のリボンがだらしなくぶら下がっていている。最終手段、とりあえず脱ぐ!である。 しばらく唖然と名前を見つめていたモトハルだったが、その事実を頭に受け入れると素早く名前に背を向けた。両手で顔を覆う。馬鹿じゃねえのあいつ・・・!いや俺もだけど。爆発するんじゃないかってくらい急速にモトハルの頭に血が昇る。それと下半身にも。 静まれええええ俺!全体的に静まれえええええええ!!!! モトハルは心の中で必死に自分に呼びかけて、荒い呼吸をくりかえした。そんなモトハルを名前はニヤニヤと楽しそうに見つめ、やっちゃえよ、やっちゃえば楽になれるよー、我慢しなくていいんだよーと悪魔のささやきをモトハルに投げかける。モトハルは思わず耳をふさいだ。ここまで来るともう意地だ。 それからしばらく。時間はかかったものの、モトハルは何とか自分を押しつけるのに成功した。それでもまだ耳が赤いモトハルの後ろ姿を名前は面白くなさそうに眺めた。実際面白くないのだ。 「モトハルって理性でしか動けないわけ?」 「・・・あのなあ名前、お前はもっと自分を大切にしろ」 「私、自分を大切にしたいわけじゃないもん、モトハルを大切にしたいんだもん」 「俺を大切に思うんだったら自分を大切にしろ」 「モトハルだって我慢することないのに」 「べ、別に我慢してねえよ」 「嘘つきは地獄に落ちやがれ」 「嘘じゃねえし」 「私を大切にしてくれるのは嬉しいけどさー、ちょっとは乱暴にしてくれないと女の子はついていかないぞー」 「ハイハイ、善処させていただきます!」 嘘だな。名前はそう悟ったがわざわざ口には出さなかった。名前は負けたのだ。モトハルの強固な理性に。名前は長い長いため息をついてから今後の作戦を考えた。失敗は成功の母。そう思うことにする。コスプレでもすればいいのか、もっと甘えたようにすればいいのか、いっそのこと薬を盛ればいいのか・・・。 うんうん唸る名前を反省していると勘違いして、モトハルもようやく一息ついた。まだ心臓は異常な早さで動いている。どんだけ俺を揺さぶる気だよ・・・。モトハルは心底疲れていた。正直もう寝たい。いや、いやらしい意味じゃなくって。ああ、でも名前がいるから無理か・・・。そんなことを頭で繰り返しながらモトハルはふと気がついた。これって普通、逆じゃね? モドル |