!!ループモノ
!!ネタバレ











「……現場には故意に残したとしか思えない証拠が沢山あった。…名字さん、キミは、…」
「そんなつもりは無いよ。私だって卒業できるならする気だった」
「それは違う…。だってキミは…っ、知っていたはずで、何で、何でこんなことを…」
「…」


目を閉じれば、脳裏には色褪せることの無い鮮明な死が映し出される。粘つく赤にむせかえる臭い。中途半端に開かれた目はもう閉じることも開くこともなかった。
死んだ。私が殺した。この手で、


「……、……ンで、殺したんだよ」


それは、正に絶望的な眼差し。
掠れた声にはより濃い絶望が滲んでいて、それが空気に溶け出していくようだった。息が詰まるようで、意外に心地いい。自然に上がっていく口角に、外道だなと自分を罵ってみるが抑えるつもりも毛頭無い。望んでいた結果で、満足すべき結末だったのだ。


「大和田」
「何で不二咲を殺した!!!答えろ名字ッ!!!!」


それを言うことは、絶対にない。


「答えろよッ!!!何で殺したんだ!!オレ達は生きて外に出るんじゃなかったのか!!ふざけんな!!ふざけんなよ…ッ!!!!」


最早、悲鳴だった。聞いたことの無い彼の悲痛な声。大和田は目尻に光ったそれを乱暴に拭うとギッと私を射殺さんばかりに睨みつけた。
その言葉、そっくりそのままいつかの君に返してやりたい。なんて思いつつ、妙に満たされた気分だ。私は浅く息をつくと、大和田の瞳を真っ直ぐ見返した。



「大和田…」
「…」
「…君は、…本当にクズでヘタレでどうしようもない馬鹿だな!!!」
「は、ン、なんだとゴラァッ!!!!」
「…でも、本当に…大好きで、…愛してる」


───だから、殺してやったんだ


「…ごめんね」
「――ッ!!!」


言葉を詰まらせた大和田は少し赤くなっているようにも見えた。あ、やばい好きだ。そう言えば好きだの愛してるだの今週回は言ったことなかったような気がする。それはどうせ死ぬつもりだった大和田の私への負担を減らすためではあったけど、一緒に外に出ようとか言っちゃった時点であんまり意味は無かったような気がするな。まあ大和田よりはよっぽど良心的だ。
少しの沈黙を見逃さず、退屈な茶番に飽きたトリックスターが言い聞かせるような音色でオシオキの始まりを告げた。愉快な音楽と誰かの怒声。人の尊厳をどこまでも踏みにじった大和田の処刑が脳裏に浮かぶ。いっそあれぐらいやってくれた方が助かる。不二咲ちゃんの死体、どこまでも生々しい死の感覚は私の網膜と両手にしっかり刻み込まれていて、もう忘れることはないだろう。だから、何もかもぐちゃぐちゃの細切れにして、無かったことにしたいと思うことくらい、許されるはず。手が震える。最後にもう一度大和田に視線を向けた。いつかの私もあんな目をしていたのだろうか。私は身体を翻し、いつかの彼みたいに処刑場へ向かった。




モドル