正直に驚いた。
てっきり彼は私のことを嫌いなんだと思っていたから。あの仲良しクラスの中で彼のどこ私と石丸くんだけが不自然なくらいに仲が悪かった。石丸くんのどこかぎこちない笑顔は私の前だとより顕著になり、笑っていると言うよりは顔が引きつると言った方が近い。まあ、それに笑顔で応答できる私はやっぱり超高校級だなぁって多分に主観を混ぜた客観で評価したりして。
そんなこんなで、彼が私に好意を持っていて、さらにそれを私に示してくるなんて考えもしなかった。しかもこんな直接的に。石丸くんそういうことするタイプじゃないのに、風紀がなんたらって、そう、風紀はどうしたんだ風紀は。無表情に眺める先、石丸くんはとても苦しそうな顔をしていて今にも泣き出しそうに眉を寄せている。その口からは意味の無い言葉の断片だけが吐き出されていた。私はゆっくりと彼に微笑みかける。どけよ屑。その不快感に溢れた言葉が彼の心かなんかに突き刺さったようでぼろりと彼の瞳から大粒の涙が零れ落ちた。私の頬をつつと滑るその感覚は大変に気持ち悪く、その不快感に私の顔が引きつるのが分かった。ああ鬱陶しい。彼は私の上から動かない。ただ私の指と絡まったそれが微かに震えただけだ。窓ガラスから射し込んだ橙色の光が真剣だけど汁まみれの彼の顔を照らす。赤い瞳は夕日に照らされてギラギラと輝いていて、やっぱり不快だった。夕日に照らされて埃がキラキラ舞う教室、冷たい床の上で私は人生最悪最低の告白を受けたのであった。ああ、石丸くん、死ねばいいのに。




石丸くんに押し倒された
20130911
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