「あーもーうるさい!!」


黙ってろの意を込めて彼の口を塞ぐ。呆気にとられる桑田に私は勝ち誇った笑みを浮かべて言いたいことを言わせてもらうことにした。さっき私のお菓子を勝手に取ったこととか、勝手に人のジュース飲んだりとか、要約すると小学生みたいないたずらは止めろってことである。お前の脳みそは小学二年生で止まってやがるのか。と睨むとマジでへこんだような顔をしたのでこれぐらいにしてやろう。私ってば優しいのだ。と、腕を離そうとすると、腕が何かに掴まれた。桑田の手だ。桑田はそのまま私の手を、もう一度口に押し付けた。…意味が分からない。何やってんの…?とドン引きして言うと、様子を伺うようにしてた桑田は一気に落胆した顔をした。そして、


「ひ、」


べろぉん。暖かくて湿ったものが私の掌を這い、ぞくりと腰に痺れが走った。
な、
ほとんど反射で手を振りほどくと、舐められた手をかばうように私は後ずさり、桑田と距離を取った。顔に熱が集まる。
な、なな、


「何やってんの桑田マジあんたホント信じらんない!!!何やってんの本当に!!!こんなの今時小学生だってしないよ何なのよ馬鹿!!!!」
「いやなんかやるしかねーな?って思って、マジ俺マキシマムにカッケーっすわー」
「死ね!!氏ねじゃなくて死ね!!!!!」


あーもー手はベタベタするし最悪だ。花粉症の誰かが持ってきた箱ティッシュから何枚もティッシュをもぎ取り手を拭く。桑田は頭を掻き、めんどくさそうな顔をしているが頬はだらしなく緩んでいる。それが余計に私の苛立ちを煽った。あのねえ!と暴言を吐こうとした時、桑田が廊下の方を見てあ、とこぼした。


「何よ!」
「今、廊下にお前の大好きな田中先輩通ったぞ」
「えっ、うそ、ホントに!?」
「うっわー何それ声のトーン違い過ぎんじゃん!ひでー」
「うるさい馬鹿…って、何」


私は桑田の顔を見て、ぎょっと目を見開いた。


「なんでそんな泣きそうな顔してんのよ」



13/04/23~13/04/30 拍手小説5
キスの格言:掌なら懇願


自分を見て欲しい桑田
20130515
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