「頼む!お願いします!二万だけ貸して!!」


目の前で机にデコを付けるクズ男を前に私は先程頼んだカプチーノをすすった。うん、おいしい。


「リアルな話今日の昼飯食う金も無いんだべーッ!」
「あっそう。じゃああんたさっき頼んだナポリタンやっぱり私に奢らせる気だったんだ。奢らないけど」
「ひでぇ!迷える子羊と言うなの俺にどうか手を差し伸べて欲しいべ!!」
「このクズ」
「なーぜか最近よく言われんべそれ」


ケラケラ笑う葉隠に殺意が湧いた時、ナポリタンが届いた。あそういえばこの店のナポリタン、高いけど美味しいって前に聞いたことあるような気がする。じと、とした目で葉隠を見るとそんな見られると照れるべーなんて馬鹿みたいな返事が返ってきて思わずため息が出た。


「っていうかあんた、一応超高校級の占い師らしいし私より稼いでんでしょ、てかいつまで高校生なのよ」
「この前三ダブに突入したべ!」
「クズが」
「希望ヶ峰は学費が安いんだべー、もう卒業したくねーなー」
「その浮いた金は一体何処に消えてんのよ…」
「お!聞いてくれたべな!」


葉隠は何処からか水晶玉的なものを取り出し聞いてもないのに水を得た魚のようにペラペラと説明し始めた。いつの間にかナポリタンは食べ終えたようである。卑弥呼だの、織田信長だの…よく信じたもんだ。ホント馬鹿だな。一体これにいくら掛けたんだよ…いや、それは怖いから聞くのは止めておこう。


「仕方ないな…喜べ馬鹿。奢ってあげる」
「うお!マジか!流石社会人様様様だべ!!」
「その代わり次会った時財布の中身全部貰うから」
「おーおー余裕だべ!」
そう笑うと葉隠はそろそろ用事があるんだべ、と言って立ち上がった。そして角張った手がゆるゆると私の前髪を掻き上げ、軽いリップ音と共に額に柔らかい感覚が。外人か。マジ助かったべーと笑顔で去っていく葉隠に思わず舌打ち。何だか全てがヤツの思い通りになったような気がしてならない。クソが。私はポケットに入っていた携帯を取り出した。葉隠の借金取りさんに連絡を入れるためである。ここからそう遠くへは言っていないはずだ。まあ一緒にいるときに連絡を入れても良かったんだけどそれは…いや、考えるのは止めよう。私と葉隠は永遠に友人なのだから。


13/04/23~13/04/30 拍手小説4
キスの格言:額なら友情


天然たらし葉隠
20130515
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