深淵夢主if 別ver.

「あ、」

次の授業で使う教科書を家に忘れてきた。そのことに気付いたのは休み時間終了5分前。普段はこんなドジなんてしないのに、何故今日に限って忘れてしまうんだ。朝の私に言おう。忘れ物はないか?
しょうがない、と溜息を零し、ダメ元でアイツのとこに行ってみることに。

確かアイツの教室は2個先だったはず。多分。教室にいるかすら危ういが休み時間もあと数分で終わるからいるでしょう…あ、いた。なんだか後ろの席にいる緑の髪の人と一方的に話しているみたいだ。だがそんなの知らん。

「和成」

「はーい?」

呼ばれてすぐこちらに来た片割れに、残り時間も少ないため、単刀直入に英語の教科書を持ってないか聞く。すると意外にも持っていると返ってきたので貸してもらった。もしなかったら?うーん、なかったら別のクラスの子に聞くね。
次の授業が終われば昼休み…返すとなればその時間がいいだろ。

「英語この後あったりする?」

「6時限目にあるぜ。それまでに返してくれないと和成困るw」

「昼休みには返すよ。ありがと」

英語の教科書あったからもしかしたら…と思ったらあったのか、授業。しかもラストとか。ウケるー。

英語の時間はあっけなく終わり、昼休み。食べてから返すかいっそのことお邪魔する(一緒に食べる)か悩んだが、結局返しに行かなくちゃいけないし、と考えた私はお邪魔しようと弁当片手に本日二度目の和成のいる教室へ向かったのだった。

「ちーっす。返すついでにここで食べる」

「お、ちーっす!いいぜ。あ、椅子借りるな!」

教室に入るなり真っ直ぐ和成の元へ向かった私は、和成の席の後ろの緑の髪の人とコンタクトを取った。和成の体の向きからして一緒に食べるみたいだったし?お邪魔するね?みたいの。

「一緒に食べてもいい?」

「…構わん」

お礼を言い、近くから借りた椅子を移動させ座るなり、英語の教科書を和成に渡した。一瞬ちょっとだけこいつの存在忘れてたとか…ないよ。あはは。
机に弁当を広げた私はもぐもぐと食べ始めた。まあ、ここで何か話すこともないしな。あ、あるとすればだな。
口の中に残ったおかずを飲み込み、緑の髪の人を見る。彼はこちらをじっと見ていたのか、すぐに目があった。

「ごめん自己紹介忘れた。私高尾名前。和成の妹ね。よろしく」

「お前が…。俺は緑間真太郎なのだよ」

……おおう、突っ込まない。突っ込まないからね?
和成は横で「また忘れてやんのwww」と爆笑しているが無視だ。今それどころじゃない。
緑の…緑間の口振りからして私のこと知っているようだったけど、和成が少し喋ったんだろうな…。横目で和成を見るが、彼はまだ笑っている。緑間も大して気にしていないようだし、このまま放っておこう。
ちなみに「また」というのは自己紹介だけに限らず、いろいろと忘れがちなのだ。いや、なんかね、別にいっかな、みたいなね。
別に自己紹介がめんどくさいとかそんなんじゃないんだ。本当だよ?

「あ、せっかくだからさ、今日マネージャー手伝ってくんない?最近人手不足でマネージャー大変そうなんだよ」

「えーやだよー。今日発売されるゲームするんだ」

「そこをなんとか!ね、真ちゃんも手伝ってあげてほしくね!?」

黙々とご飯を食べていた緑間に話を振る。こんな奴の話無視でいいよ。そう言おうと口を開くが緑間が一歩早かった。

「人事を尽くせ、高尾妹」

「…はい?」

「ぶっふwwwww」

人事?コイツは何を言ってるんだ。和成に目で助けを求めたが奴は笑っててこちらに気付いてくれなさそうだった。ていうか高尾妹て。そのまんまじゃねえかwwwwじwわwるww
今おかず食べても吹いてまともに食べれないだろうなとか頭の端っこで思いながら、一先ず笑いが収まるまで俯いて肩を震わせてた。顔見られないように片手で隠しながら肩を震わせる自分…。妹ちゃんにマナーモードお兄ちゃん言われたくらいだ。よし黙る。

「っふ…ん、緑間、もうちょっと詳しく言って」

暫く笑ってた二人などお構いなしにご飯を食べ…いや既に食べ終えた緑間は机の中を漁っていた。緑間にとって、和成がずっと笑いっぱなしってのはよくあることなんだろう。だからそんな呆れ顔してるのね!?
しかし私の質問に緑間が答えてくれる前にやっと復活したらしい和成が代わりに答えた。

「真ちゃん流に言うとー…手伝ってやるのだよ☆ってことだな!」

「勝手な推測はやめろ、高尾」

「☆飛ばすな」

とほぼ同時に和成に物申した。だがしかし今なんと言った和成。私に手伝えだと…(戦慄)
まさか緑間にも手伝えなんて言われるとは思ってなかった。和成以外に言われると…ていうか他人に言われると…。

「しょうがないな…」

「お!マジで?」

「ハーゲン○ッツで手を打つわ」

「抜かりないwww真ちゃんもちょっと出してね!ww」

「断る」

和成の部活って言ったらバスケ部だったよね。女バスなら見たことあるし手伝ったことあるけど。男バスかーお初だ。それからご飯を食べ終えた私は、昼休みギリギリまで和成たちの教室にお邪魔していた。

放課後一緒に行くから待ってろ、というので待っていたのだが、来た時緑間が大きなクマのぬいぐるみを持っていたのには吹かずにはいられなかった。
体育館に着くなり和成だけ先に主将さんに話を付けてくると言うので、外で緑間と待っている間、もってるぬいぐるみの事で盛り上がった。おは朝だとか、どこに置いてたのだとか。
そんな会話だけでも十分彼とは打ち解けてきたと思う。なぜ分かるかって?
名前で呼んでくれたんだよ!「高尾妹」じゃない「名前」って!なぜだか無性に嬉しかったね。

時は流れ、先輩マネさんに部活の仕事について聞き終り、初仕事をしていた。簡単そうに見えて実は重労働とか、聞いているだけでも大変そうだったのに、いざやってみると大変だ。部員数が多いからとも言っていたけど絶対それだけじゃないっすよね先輩。
先輩マネさんに教えてもらいながらスポドリも作らせてもらった。これが出せるかどうか、先輩マネさん味見してもらったところ合格点をもらった。やったね!ちょうど休憩時間になったらしい部員たちに早速配りに行った。

「お疲れ様ですー」

「お、さんきゅー」

「ありがとう」

女バスにはない何かが男バスにはあって、何かというのは分からないけどなんだかかっこいい。練習してる和成なんて見たことなかったからすごく新鮮だし、緑間との連携もすごい。
そういえば入学したての頃、和成が「中学で戦った相手がオレのこと覚えてなくて〜」みたいなことを言っていたのを思い出した。その時の相手が誰だったか言っていたような気はするけど覚えてないや。きっと緑間のことだったんだろうな。なぜだか分からないけどそんな気がする。私の勘はすごいんだよ!(たまに)

話は変わって、これって一体どういう状況なんでしょうかね、ええ。

「似てねー」

「いやいや微かな雰囲気は似てる」

「目元が似てる」

「先輩たちそりゃないっすよwwオレら一卵性なんでちゃんと似てますよ。よく見て!」

スポドリ回収よろしく!って先輩マネさんに言われ、ある程度回収し残り僅かと言う時、狙ったかのように和成に呼ばれて行ってみたら、身長高い先輩3人のところに連れて行かれ、何でもない普段通りのテンションで「コイツ俺の妹なんすよ!」と喋ったのが事の八端。…よかった点と言えば、まだこの人たちからスポドリ回収すませてなかったから出来たことだろうか。

それでマジかーみたいな目で見られた後、どこが似てるか見比べられてるわけで。似てないって言われたの初めてなんすけど。

「緑間、ヘルプ」

「…主将、そろそろ仕事に戻らせてあげた方がいいのでは」

「そうだった。すまない。木村、宮地、もういいだろ」

「ああ。…宮地?」

「…ムカつきそうでムカつかないな」

「なんですかそれ」

じっと見られた後主将さんと木村先輩と宮地先輩たちは離れていった。助かった、マジありがとう緑間。お汁粉3杯おごるね。

先輩マネさんのところに急いで戻れば、「遅いよ!ふふ、なーんてね!」…とまあ注意されてだけで済んだ…のかな?優しい先輩さんだ。着いていきます。

部活を終え早々に帰った私は悪くない。和成と主将さん…大坪さんにも言ったしいいよねー。

次の日になって、一部の人間からバスケ部のマネージャーになったっていうあらぬ噂と、バスケ部員(一部)からのマネージャー勧誘が始まるとは知りもしなかった。



最初に書いてたのはこっちだったんですが、最低緑間とは仲良くやっていたいなと思いまして、急遽書き直し。
こっちもこっちでみんなとは仲良くやっていけそうですが…まだ本編で絡めていませんから仲良くてもなーと。
どっち道、バスケ部マネになってほしいのは変わらない。
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