「もう一度」2話修正前
「よぉ苗字」
よしよしと黄瀬君の頭を撫でてると私の頭に重みと共に名前を呼ばれた。
重くなった頭を頑張って上に動かすと日本人かと疑うほどの肌の黒さの彼。
『あ、青峰君久しぶり。青峰君もここに…?』
「おう。合格もしたぜ」
『え、嘘…』
「嘘じゃねーよ」
ガルルル…と今にも飛び掛かって来そうな勢いでこちらを睨む青峰君。こそりと黒子君の後ろに避難する。
まずここはそれなりに出来ないと入れないレベルの高い大学である。言っちゃ悪いが青峰君の様な馬鹿がどうやって合格したのだろうか。一つだけ考えはあるけど出来れば考えたくない。
他にどうやって合格できたものかと考えてると青峰君の後ろから声がした。
「人事を尽くしたまでだ」
『…やっぱり緑間君“たち”のおかげなんだ』
青峰君が退くと後ろに人が数人がいた。中でも比較的小さい彼が続いて口を開く。
彼は悪戯を仕掛けた子供の様に笑っていてなんとなく嫌な予感がする。
「やあ名前。久しぶり」
『…久しぶり。これはどういう事なの?』
「そうだね…名前に推薦が届いただろ」
『推薦…?ああ、うん、来たね』
数ヶ月前に来たアレを思い出す。改めて考えると何で来たんだろ。
だって誰にも住所は教えていないのだから。
「あれは僕が出したものだよ」
『…………』
やっぱりそうか、当たっちゃったよ。女の勘怖い。でもちょっと嬉しい。
それが顔に出てたのか「何がおかしい」と言われてしまった。
考えていたことをそのまま彼に伝える。推薦が来たとき、赤司君が浮かんだこと。あの推薦のおかげで迷わず大学を選べたこと。
『これでも感謝しているんですよ、赤司君』
「…そうか」
話してて気づかなかったけどいつの間にか青峰君と黄瀬君と黒子君と緑間君は飲み物を買いに行ってしまっていたらしい。
…ミスディレクションだと…!?
今思い出したように赤司君が話を切り出した。
「あ、それとね名前。みんなで一緒に住むことになったから、君も準備しておくように」
『…………は?』
ちょっと待って。どういうことなの。
話が唐突すぎる…!
混乱する私を他所に赤司君は帰ってきた4人を含めみんなを集めていた。
混乱したままの頭で答えを出した。つまりそういうことですか。
私に推薦を送ったのはみんなで住むからこの大学にしろと。すべては仕組まれていたのね。
…家探すの省けたからいいや。許す。
『みんなってキセキ…この6人と?』
「そうだ。詳しいことは後程伝えよう」
と言ってパソコンのアドレスを聞かれたので素直に教えた。なるほど、携帯じゃ無理か。
そういえば一人いない。そんな疑問を赤司君に伝えてみた。
『赤司君、桃井さんは?』
「彼女は女子大の方に行ったよ。いつも気がかりだった大輝はもう大丈夫そうだからと言って」
『そっか』
会えないのは寂しいけどそのうち会えるよね。
今日はもう用事は済んだし、みんなに一言言ってから空港に向かった。
みんなと住めるのは嬉しい。それがこの3年間の開いた溝を埋める様だったから。
だが楽しみすぎて気が付かなかった。一緒に住むということはそれなりに危ないと。
男6人の中に女1人、一つ屋根の下で暮らすのだから…。
「それから当然だがみんな合格だ」
『わ、すごい』
それなりに気に入っているので残しました。
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