07


円状に座ってから赤司は一度皆の顔を見渡し一つ頷いた。よし。ということだろうか。時々視線を感じるが今それは気にしないでおこうと思う。はい。
赤司から右に黒子、桃色の女の子、黄色い人、リコさん、黒髪さん、私、和成と順に並んで座っている。皆さん美形な方が多いようで…和成もモテるとは聞いたけど、黒髪さんもモテるだろうなあと思った。黄色い人も多分モテる顔だろう。それにしてもあの辺目に優しくない。暗いこの場所の中、明るいあの辺。

「一先ず集まったところで…高尾さん、皆に自己紹介をしてくれ」

「あ、はい。えーと桐皇高校一年、高尾鈴です。一応、これの双子の妹です」

「これwwwwこれって酷いwwwww」

ちょ、急に隣で爆笑するなうるさい。どつくと「痛いwwww」と更に笑い出した。そう言えばそういう奴だった…もう知らん、騒がしくて本当にすいません。ここまで笑われるとちょっと頭に来るわー…。
自己紹介をしたところで周りの警戒も少しは薄れた。うーん和成ってそんな有名だったかね?だからと言って警戒心が完全に解かれたわけじゃない。なんか居心地悪いなあ…。

話は変わって、私が自己紹介してから桃色の女の子がこちらをじっと見つめていた。なんだなんだと放置していたがそろそろ限界…その子の方を見ると彼女は「あ、」と声を漏らした。

「高尾…さん?もしかして3組の?」

「?そうだけど、どうして」

知っているの?と言おうとしたが途中でやめた。よく見たら彼女の制服が私と同じ。つまり彼女も桐皇生なのか。でも私は彼女を知らないはずだけど…見たことあるんだよな……はて、どこだったか。

「えっと覚えてない?夏休み明け、体育館の倉庫前で3人の先輩さんたちに囲まれているところ…」

「もしかして私が偶然通りかかった…?」

「そう!覚えてる?」

「…ちょっと待って。今学校の事が思い出せない」

「ちょwwwそれ重症wwwwww」

横で和成が笑い出したが今は放っておこう。でも後で一発やっておこう。理由はなんであれ笑われるのは腹正しい。内容にもよるけど。
えー、でなんだっけ?あそうだ夏休み明けの体育館、倉庫前。3人の先輩とか思い出せないけど、でもうん…あー。

「…なんとなく思い出した」

「あの時のお礼まだ言えてなかったから、ずっと言いたかったの。あの時はありがとう!」

「お礼言われるようなことはしてないけど…」

思い出したのは夏休みが終わって部活初日のあのくそ暑い日の事。偶然体育館倉庫前を通ったら話し声が聞こえて、知ってる先輩がいたので話しかけたら先輩たちが逃げて行った。んで、逃げて行ったところに残っていた人がいて、一言謝ろうと顔を見たらその子が妙にきらきらした目で見てくるから、居ても立ってもいられなくて逃げた記憶が…。

この事は誰にも話していないし、周りにも人がいなかったと思うから、知ってるのはその場にいた人間…。つまり、彼女だったということになるのか。

「ううん!あれ以来何もないから…だから鈴ちゃんが来てくれてよかった!」

「あ、うん…」

さっき「高尾さん」って呼んでたのに急に「鈴ちゃん」呼びになった。鈴ちゃんびっくりだよ。和成私びっくりしてる。今なら笑っても少しくらいなら許すから、この後どうすればいいのか教えて。
びっくりしすぎて、謝り損ねた。本人がこう言ってるし、言わなくても良いかな、なんて!(面倒だし)

「あ!私桃井さつき!よろしくね!」

「うん、よろしく」

桃色の女の子、もとい桃井は「私も一年だよ!」と嬉しそうに話してくれた。眩しい…辛うじて残ってる眠気が吹き飛んでしまいそうだ…いやここは吹き飛ばすべきか。
さっきからとてもにっこにこしてるけど辛くないのかな。何故そこまで笑えるんだろう。いつの間にか私の前まで来ていた桃井は、赤司に言われ黒子の隣に戻った。
…どうでもいいけど、桃井の隣にいる髪が黄色い人がめっちゃ睨んでくるんですけど。あー怖い怖い(棒)

何とかしてもらえないかと和成を見ると見事に目が合った。もしかしてずっと見られていたのかな?なら私が黄色い人に睨まれているのも分かるよね…?和成は笑いを堪えてるだけで、何を言うわけではなかった。くそう、後で覚えてろよ。

「鈴、こっちの黒髪の人は伊月俊。私の部活仲間よ」

「よろしく」

「こちらこそ」

リコさんの隣にいた黒髪の人は伊月さんというらしい。リコさんと同学年で先輩さん。よし覚えたぞ。黒子と同じ制服だから、同じ学校なんだろう。誠凛、だっけ?それだけで3人いる。

「…涼太も」

「黄瀬涼太ッス」

「どうも」

一向に名乗らないから赤司が促がすと渋々と言った感じで喋った。それから彼は何か身構えてたらしいが、私がそれ以上何も言わないでいると一瞬、呆然とした表情を取ったがすぐに戻った。…何だったんだ、今の。
ん?黄瀬ってタメだろうか。でも先輩には見えないからタメなんだろうな。先輩だったとしてもタメでいいや。

「全員言ったな。次にここに来るまで何をしていたか話してくれ」

ここに来るまでの事。それって必要な事なのか?と疑問に思ったが誰一人して何も言わないからいいのかと無理矢理納得させた。
さっきから思ってたけどこの人は不思議だ。同じ一年だと言うのに自分が先導して事を進める。先輩も何も言わないしなんなのこの人。…後で和成に赤司について聞いておこうかな。

赤司が言うと彼の隣にいた黒子から話出した。…えっとどの順番で話すとか言ってないよね。何この謎の団結力。アイコンタクトもなしですか。そうですか。

「僕は部活終わりに火神くんとマジバに寄って、バニラシェイクを飲みながら少し話してました」

「私は青峰くんの家で、私の家族と一緒にご飯を食べてたよ」

「オレは仕事場にいたッス」

「私は家で明日の練習メニューを考えていたわ」

「俺は自主練して、帰りの途中だった…はずだよ」

黒子、桃井、黄瀬、リコさん、伊月さんが次々と話し、順番的に私の番になった。ていうか、仕事場って何。バイトですか?あと全く知らない名前も出てきたんですが、なんなの。
まあそれも後々和成に聞いてみると言うことで。なんだっけ、目覚めるまでのことを言うんだよね。えーと…。

「和成と勉強しようって話になって自分の部屋に行ってた」

「オレは真ちゃん送って家に帰ってからは鈴と一緒。オレの部屋で準備してた」

「僕は寮で友人たちと一緒にいた。…皆それぞれだな」

それから和成、そして赤司へと回った。話したはいいが、何か引っ掛かる気持ちが残った。この訳の分からないもやもやにイライラする。目の前にあるのに見えない感じで。なんでか引っ張られたあの時の感触を思い出す。

赤司は顎に手を当て考える素振りをしていた。…イケメンがやると絵になるなあ、写真撮りたい。
私は私でこのもやもやについて密かに考えることにした。時間が掛かりそうな問題である…。

20140806
修正 0914


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