05


「誠凛の監督さん?…君は?」

彼は知り合いがいると分かりすぐに降りてきた。リコさんが階段の方へ行くので私も着いていく。
さっきからどこで見たか考えているのだが、全く思い出せないでいる。彼はリコさんを確認した後、その後ろにいる私に視線を寄越した。その目は少し鋭いように見えるのは気のせいじゃない気がする。こういうのを探るっていうのでしょうか。いくら見知らぬ人間だからってそれはないんじゃないのイケメンさん。あーでも場所が場所だから仕方ないのか。それにしてもなんとなく、和成と関係ありそうな気がする。

「高尾鈴、桐皇学園一年。いい加減その目やめて」

「…それはすまないね。僕は赤司征十郎。洛山高校一年だ」

名乗ってからはいくらかあの目は消えたがやはり気に食わない。この時点で赤司征十郎と言う人間が少し嫌いだ。苦手、というわけではない。ていうかなんなの、まだ一度しか会話を交わしたことはないのに、この妙な余裕っぷりというか、同い年なのに同い年とは思わせない感と言うか。

話を戻すがどうやら彼もまた和成のことを知っているようでリコさんと同じように答えた。彼なりに驚いた様子だったがすぐ真面目な顔になる。
こりゃ随分と切り替えの早い人で。

「実は僕の他にもう一人いるんですが、連れて来ても?」

「いいわよ。私たちはここで待っておくわ。ね、鈴」

「はい」

「すぐ戻ります」

そう言って階段を駆け上がっていく赤司。その背を見送ってからとりあえず一人この辺りをうろうろする私。階段奥に踊り場のような場所がある。この先が向こうの校舎というわけか。白い廊下があるけど。

そういえばどうしてここまで来たんだっけ。…ああそうだ確か微かではあったが声のようなものが聞こえてここまで進んだっけか。ここに来るまで随分長かった気がする。実際は5分程だろう。

待ってる間暇なので今来た道、保健室からここまであった部屋を思い出していこう。
私らがいた保健室の奥、右に位置する場所に会議室があった。それが一番端っこで一番奥。それと大きな硝子付の扉。この近くにある扉から推測すると恐らく開かないだろう。ホラゲーあるある。それにお決まりの真っ暗だったし、多分。
それと保健室と放送室の間にほんの数メートルの廊下、奥にまた扉。以下略。その反対に階段とトイレとまた違う出入口。

あれ、そういえば学校だというのにまだ教室を見てない。ということは教室はまた別の場所にあるのかな。そこまで整理してると階段からまた足音が聞こえた。リコさんのところに戻ると、赤司の後ろに水色の髪を持つ男の子がいた。なんでこの二人こんなに髪の色派手で綺麗なの?イケメン限定なの?
水色の髪の青年はリコさんと少し話した後こちらに振り向いた。すごい、無表情。リコさんと知り合いってことは彼氏か何かかな?

「鈴、紹介するわ。後輩の黒子テツヤくん」

「どうも」

「どうも。高尾鈴です」

恋人じゃなかった。リコさんの後輩だった。
黒子、黒子…こちらの名前もどこかで聞いたことある。……ああもう!なんでこういう時和成いないの!?むしゃくしゃするので帰ったら問答無用で殴る。よし決めた。
黒子は私をじっと見た後ぼそり「結構似てますね…」と言った。多分赤司が高尾の妹だーとか言ったんだろうな。今までの経験から推測してみた。とてもありがたい。

「とりあえずこれからどうするか、だな」

赤司くんが言った途端、向こうの校舎からまた悲鳴が聞こえた。聞き間違いでなければ最初に聞いたような悲鳴だ。ちょっと待って向こうからだったの!?
皆一斉に振り向くが特に何もいない。それでも目線は外さず数秒見つめていると数人の足音。それからすぐに人の影が少しずつ見え始め…一部色鮮やかなんですけど。彼らは必死に走って来ている、が………後ろに何かいる?

「あれは…」

「…様子が変ですね」

「…!皆さん私たちも逃げたほうがよさそうです!」

「え…」

そうこうしている間にもバタバタと向こうの奴らがやってくる。私の声をきっかけに意味も分からず逃げ出すリコさん、赤司、黒子。後ろにいた奴はすぐに追いつくだろう。そしてなぜ彼らが慌てて走っているか今に分かることになる。

「っ涼太!何があった!」

「え!赤司っち!?あっ黒子っちもいる!?」

「涼太!」

「ええっと化け物ッス!!」

「は…?」

涼太…と呼ばれた黄色い人は赤司の質問に走りながらも必死で答える。舌噛まない?大丈夫なの?
このまま話していても体力がすぐなくなってしまうんじゃないか。主に女性人。私は抜きで。ちなみに女性は見たところ二人はいる。こっちに来た人らの中に女性がいたのだ。

体力の事とか考えれば、今すぐにでもどこかの部屋に隠れたほうがいいのでは。
そう思うと自然と足は速くなり階段を駆け上がる、という選択肢はなくなった。保健室がある廊下に来たものの、あそこ以外どこが開いてるかとか知らねえよ!
いつの間にか先頭を走っていた赤司を抜いて、目に入った近くの部屋の扉を引く。

…おっ開いた!
部屋の中が安全か一瞬で確認して皆に向けて声を上げた。

「こちらへ!」

振り返った頃には何人かこの部屋を目指して残りの距離を走ってくる。赤司を始めに全員が入ったところで急いで自分も入り扉を閉め、念のため鍵も閉めた。

自分が入る間際一瞬だけ見えてしまった“ソレ”には触れないでおこう。敢て言うのであれば四つん這いで動いてた。…うん、もう何も言わないし思わない。
扉を背にした直後ドンドン!と扉を叩く激しい音が部屋中に響く。

ドンドン!ドンドンッ!
かなりその音は響いたが暫くすれば諦めたか外からひた、ひた、という足音らしき音が遠ざかり、部屋にも静寂が戻った。

静かになった部屋で聞こえてきたのは、息を整える音と誰かが息を吐く音。少ししか走っていないのにこの息切れと激しい動機ははなんだっていうの。

…今は休憩してこの後動きますか。

20140731


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