04


どうしよう。色んな意味のそれがただ頭の中で回った。自分たちの他にも人がいるのか。悲鳴って何、もしかして幻聴か何かですか?アトラクション?どれだけそうしていたか、ただじっと扉を見据えてた。不意に隣から肩を叩かれ、ぐるぐる回っていた意識は現実に戻った。

「…行ってみる?」

「…そうですね。ここにいてもしょうがないですし」

そうと決まれば部屋の探索も手短に済ませてしまおう。
今聞こえた悲鳴が嫌なものじゃなければいいけど。先輩、勇気ありますね。でも私も正直気になったから行きたい。

色々見て回っていくとこの部屋、包帯とか消毒液とか。保健室である確率95%なんですけど。
教師が座るであろう机の引き出しから鍵を見つけた。どこの鍵かは分からないけど念のため持っておこう。マスターキーとかだったらいいのに。どう見ても違うけど。
探索を終わらせた私たちは扉の前に立った。ここは一応後輩ですからと私が扉を開ける。とか言って、本当はただ先に見たい精神なだけですが。
小さく深呼吸してから後ろに控えさせたリコさんを振り返る。

「いいですか?」

「いつでもいいわよ」

「では開けます」

がら。と聞き覚えのある音を鳴らしながら少し軽い扉を開けた。
目の前には左右に伸びる道がある。見渡してみるとどうやら廊下のようだ。つまりここは本格的に学校なようだ。暗くて遠くまで見える訳じゃないが、雰囲気、とか扉の上に表札がいくつか見える。ここは保健室とあった。
リコさんも私と同じように周りを見ていた。

「大丈夫そうですね」

「そうね。行きましょ」

そうして二人で保健室を後にした。声がしたのはかなり遠くだったし、遠くへ行ってみよう、ということで道の続く右へ。左は行き止まりだった。
外の月の明かりでしか道を確認できないここは薄暗くとても不気味だ。まだ一人でなくてよかったと心から思う。夜の学校って出ると言うけどここはそんな雰囲気ないなと場違いな考えが過る。
一人と言えば、さっき聞こえた声だ。一人、の声だと思うけど妙に高かった。多分女子でもあそこま出るものか…じゃなくて何があったんだろう。何か出た、とか。わあやだやだ。

目が覚めてからの展開が、何かのホラーゲームみたい。だけどわくわくはしないのは、どういうとこで、どうすればいいのかっていう目的が分からないからだろう。それに此処はゲームじゃないし。ゲームなら楽しんでやってただろうに。
そもそも家にいたのに、目が覚めたら学校の保健室とかその時点で色々おかしい。やっぱり瞬間移動ですね、分かります。
どうでもいいけど何故かテンションが上がらないんだよね。寝起きのまま、頭のどこかがボーっとする。

「うーん懐中電灯ほしいですね…」

部屋を二つ通過したところで小さく呟く。聞こえるか聞こえないかぐらいの大きさだったが彼女には聞こえたらしく。

「持ってるわよ」

え、と隣を見ると、ほら、と言いながら片手に懐中電灯を持っている。持っているなら早く言ってくださいよ…。ていうかいつの間に。どこで見つけたのか聞いてみたところ保健室の入り口付近にあったらしい。なんと、全く気付かなかった。
使うか聞かれたが少し悩んで今はいいと返しといた。念のため電池あるか確認したら入れ替えたばかりのように明るかった。これなら暫くは使えるほど。ならば温存だ。

廊下を大分歩いて来たところで、なんとなく今来た道を振り返ってみた。
保健室から少し間を置いて放送室、職員室、そして校長室があった。その先に事務室があるようだ。にしてもここの廊下長いな…窓の外は月明かりしかないほどの真っ暗だというのに言うほど中は暗くはないし。でもそれは廊下だけ見た部分。

さて事務室を通り過ぎたところで二つ、別れ道が出てきた。今は分岐点の真ん中にいる。見渡しやすいし。
このまままっすぐ行くと硝子付の扉がある。フロストガラスになっていて向こう側が見えない状態になっている。それでも何かあるのは分かった。硝子の向こうに茶色のような色が見えたから。
左に行くと見る限りもう一つの校舎に行けるようだ。どうやらここは二つ校舎があるらしい。左手すぐには2階に上がるための階段がある。
ちなみに右にも道があるが、何故かそこだけ他より薄暗くてよくは見えない。薄暗い向こうに前と同じような扉があるのは確かだが、距離的に考えると同じくらい。なのに辛うじて見えるって…。

「…という感じですね。階段と左、どっちに行ってます?」

「そうね…声は多分左からよね」

「恐らくそうでしょうね。では……ん?」

「どうしたの?」

リコさんと進む道について相談してると上から足音がした。小さな声でそれを伝えると彼女の体が少し強張るのが分かった。
足音だから人、だよね。それが誰なのか気になるが、リコさんをこのままにしておくのはちょっとね。周りを見渡して隠れる場所を探していると階段の方から声がした。

「誰かいるのか?」

一瞬だけ私まで強張ったがすぐに階段を見上げる。この位置からだと足しか見えない。どうやらそこまで降りて来ているようだ。人の声からして幽霊ではないだろう。足もあるわけだし。
答えるように「誰」と言うとそれは見える位置まで降りてきた。

「え…」

リコさんの目が見開く。

「赤司くん…?」

どうやら彼女の知り合いらしい。赤い髪に整った男の子。
…どこかで見たことある顔だと、彼を見た瞬間思った。…のだけど、どこで見たっけ?

20140731


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