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「これは後で見せます。その後のことなんですが」

え、なんで?…あ、そっか、今はそういう話じゃなかったか。写真で全部吹っ飛んだけど、確か制服組が危険っていう話をしてたんでしたよね。何故っていう経緯とか…そんな話してたような気がする。写真に全部持って行かれたけど。でもそれすらも忘れてたわ。

「調べ終えて戻ろうかっていう時に廊下から足音がしたんだ。ぺたぺた…みたいな」

「それって…」

「話に聞いてた四つん這いの化け物だな。あれが廊下を徘徊していたらしい。出る前に気付いて、通り過ぎるまで待っていたんだが…ちょっとおかしくてな」

「と言いますと?」

「奴の動向は俺の目で見ていたから俺が説明する。通り過ぎるまで待っていた、そこまではいい。教室の前から離れたかっていう時にまた引き返してきたんだ」

…ん?

「それから教室のドアから反対のドアまで何度か往復してたんだ。…おかしいと思わないか?」

それってまるで…。

「まるでその教室に俺達がいるって分かっているみたいだろ?」

分かっている、ということは入るところを見られていた?いや、だとしたら見つけた瞬間に一目散に追いかけてくるはず。前例がそうだったし、今回もそうだと思うんだけど…毎回違うとかそういうのないよね。それに教室にまで逃げ込めれば暫くしたら諦めて帰ってくれたはず、なんだけど。その際ちょっとうるさいけどそれは百歩譲っていいとして。いやよくないけど。
教室の前をうろうろしていた?なにそれストーカーなの?え、化け物によるストーカー?…無理。警察も逃げるレベルで無理だわ。そんな無理ゲーをどうやって切り抜けたんだろう。

「…どうやって切り抜けたんですか?」

「奴が反対を向いている間に急いで出てきた。当然気付かれないはずもなく、鬼ごっこってわけだ。ここに入る直後まで鬼ごっこはしてたからな」

皆で話し合った結果だからなって最後に付け足す日向先輩。だから戻ってきた時あんなに疲れた様子だったわけか、なるほどなるほど。かなり危なかったけど皆無事でなりよりです。最終的に強行突破ってことは相当うろうろしていたんだろうな…うう、考えただけで寒気が…。長袖だから寒くないけど。でもぞわぞわって来た。

「陽泉は化け物と遭遇していないと聞きました。前回は高尾さんがいたから会ったのか…なんて思えなくもないでしょう?」

「ちょっと思ったアル。構えていたのにガッガリだったアルよ」

私がいたから化け物に会ったんです?私がいなかったから化け物に会えずガッカリしたんです?なんかごめんなさい?どっちの意味に謝ればいいのか分からないけど!ていうかまだ一度しか一緒に行ってないんだし決めつけないでください。
にしても陽泉さんは結構好戦的だね?嫌いじゃないよ、そういうの。

思い返してみれば確かに私が探索に行くと嫌というほど毎回出会ってる。あ、最初のはノーカンで。でもそれは私だけに限ったことじゃない、けど…なんかあれに似てる。特定のキャラクターを連れていくとイベント的な。きっとこれだわ間違いない。プレイ側としてはいいけど実際に体験とか全く以て嬉しくないイベント。
というか陽線さんはまだ二回しか探索行ってないんだし、そこまで決めるのはどうかと…でもどうなんだろう。でも、そうだね。

「…恐らく良くも悪くも運がいいだけだ。仮に確認しようにもリスクが高いだけだ。考えるだけ時間が惜しい。今はそれよりも次の、」

「あのさ赤司」

黙って聞いてなさいっていう時に限って喋りたくなる。と言うかこれは一つの案に過ぎなかった。時間が惜しいなら同時にやっちゃえばいいじゃない。まだ話しそうだった赤司がその口を止め、こちらに視線を寄越す。ごめんね赤司。さりげなくフォローしてくれたことには感謝する。きっと明日は槍が降る。でも疑問が残るならやっておいたほうがいいと思う。
たくさんの視線が集まるけど気にせず行こうじゃないか。

「例えば私と誰か、あと陽泉さんの中から誰か二人選んで、そうだなー20分くらい歩き回るとして、どちらに化け物が来るか検証してみればいいんじゃない?時間が惜しいなら今すぐ」

「…君、どれがそういう意味か分かっているのか?」

「分かってる。でもこれは例えばの話。確認だけならこれだけあれば十分でしょ?」

「…例えば、ね。だがあまりにも危険が大きい。あまりやらせたくない検証だね」

まあ確かに私としてもやりたくない半分やってみたい半分プラスの好奇心。例えばで言ってるけど10…いや60%は本気だった。多分赤司にはそれが見抜かれてる、と思う。あの鋭い目は密かに何かを物語っている…。そう強いて言うなら冗談でもやめろみたいな。あ、目を細めた。ライオンが獲物を狩るタイミングを見るかのように細めた。待って私食べれないおいしくない。なら食われる前に逃げないと。…ライオン相手に逃げれるのかな?99%無理だろうね。
でもね鳥なら或いは逃げれるんですよ。…多分。

20160928


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