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探索後の恒例の報告タイム。相変わらず誠凛さんと陽泉さんの違いに何度も目が行き来してしまう。帰って来た時よりかは回復はしてるようだけど、それでもまだ疲れたような顔色で、これは無関係の人間でも心配になるレベルだなと思います。周りも心配するような気遣うような目を向けてる。そして一部の人は陽泉と誠凛との疲労度に見比べてたり…あ、違う。これ私だ。
もう一度言う。何だこの違いは。

「…誠凛さん、本当に大丈夫ですか?」

「大丈夫だ。始めてくれ」

「…分かりました。では」

なんか、誠凛さん焦ってる?休憩もなしに報告しちゃって大丈夫なの?…と言ったら、探索から帰って来た時必ず五分くらいの休憩が入ってたはず。なのに今回に限ってそれがないなんて…。赤司が休む時間を与えないなんてないだろう。陽泉さんはほら、見た通りケロッとして元気そのものだからいいとして。誠凛さんはもうげんなりだから。これ見てはい報告!とかそんな鬼のような事…何か訳でもあるのか。
休憩時間がないとすれば、赤司が本当に鬼だったか、ただ単に忘れてるか、誠凛さん自らがやるよう言ったか…?あと赤司の気まぐれとか。
なんにせよこれはおかしい、と言える。多分そんな大したことじゃないと思うけど。

「今回少し危険ではあったが一つ試してもらいたい事があり、誠凛さんに協力してもらった。報告を急ぎたいと休憩時間を省いている」

なるほど。一人納得しながら話は続いていく。赤司が鬼じゃなくて本当によかったわー。疑ってごめん。心の中で謝っておいた。心の中で思ったことなので。
赤司はちらっと日向さんに目配せし、日向さんが小さく頷いてから前を向いて話し始めた。

「赤司の見解と今回の結果を含めて結論を言う。始めに黒子や伊月といった体育館の外にいた奴らが危ない。まだそうと決まったわけじゃないから、かもしれない、ということだ」

ほう。体育館の外…黒子や伊月さんってことは他には、リコさん、黄瀬、和成、私、桃井、赤司…制服組ってことでおっけー?そしてこのメンバーが危ないと。へえ。……ん?私も?あれなんでだ。

「鈴、もう少し聞いとこ?」

「ウィッス」

あれ、心の中読まれた感じ?なんだろうデジャヴを感じる。これで何回目だ?相当分かりやすいのかな、私って。とりあえず落ち着け。全部聞いてから考える。混乱は別にそこからでも…いや混乱しない方がいいけども!とにかく切り替え、切り替えなきゃ。なんか大事な話な気がする。

「俺が見た事、聞いた事含めて話すが、初めに人間じゃない化け物の存在が確認されたあの時、伊月、黄瀬、高尾、桃井がいた。あの後リコと黒子、赤司と高尾の妹が巻き込まれるように合流し逃げた」

この言い方はどうなんだと思うがあの時のことを思い返してみる。…まあ、あながち間違ってはいないと思う。少々語弊のある言い方だけどこれ以外にどう言えばいいのだろう。……"たまたま偶然鉢合わせた"?これはこれで間違いもないと思うけど。

「で、合ってるか?」

「概ねそんなところです」

おっとここで赤司公認です。あれは巻き込まれて一緒に逃げた、そういうことです。今だから言えるけどなかなかのスリルでしたね。出来れば二度と味わいたくないスリルです。
追いかけられるのは意外と体力も消耗するし。なにより得体の知れないものに追いかけられるっていう恐怖心からの精神への負担がもう…後はお察しください。

「次に体育館に集まる際、出くわしたんだっけか。ここまではメンバーはほぼ変わらず。その次に海常が狙われ…この時黄瀬が集中的に狙われて…でしたっけ」

「確証はないが、真っ先に黄瀬を狙ったようにも見えたってだけだ」

「同じく探索に出てた陽泉は化け物との遭遇はなし」

見つけて体育館に戻る道中で前方から化け物がやってきたりー、と。海常さん、主に黄瀬たちにしたらほぼ連続で…しかも2体でしょ?精神的にかなりきつかったのではないかと思う。始め追いかけられた時と同等…いやそれ以上?推測では黄瀬がターゲットにされてたっぽいし。…ターゲット…。
ちょっと流してたけど陽泉さんは化け物に会わなかったんだよね。ちょっと羨ましい。

「次は陽泉と高尾の妹で探索に行った時。高尾の妹の上に化け物が潜んで落ちてきた。結局物理で退けたんすよね」

「ああ、氷室がな」

「氷室の一蹴りで一発アル」

そういえばそんなこともありましたかねー。間一髪のところを紫原に助けてもらい、アレが私に触れることはなかった。触れたら二度と探索には行かなくなってたでしょう。下手すりゃ泣くかもしれない。いやだってあれはほんとに無理なんだって…。
その後の氷室さんもすごかった。直接は見てないけど。氷室さん、怖くはなかったのかな…なにそれかっこいいんですけど…!横抱きの件については触れないからね。触れませんよ。

「それから秀徳と高尾の妹との時。教室のロッカー…のあれはどうなのかさっぱりですが、帰りに出会ったんでしたよね」

「これまでの報告にない奴だな」

「結構背ェあったよな。大坪くらいか?」

「俺よりは高かったと思うぞ」

それはそれで怖かったけど。一番怖かったのは、目が合ったような錯覚を覚えたあの時かな。今思い出してもまだ少し怖いや。
話にも出てたけど確かに背は高かった。煉瓦当たった時はびっくりしたけど。そこそこ重かったはずなのに見事に当てやがって。よくやった和成。背は大坪さんよりもうちょっと高いらしいから、多分大坪さんより顔半分は上かも。ごめん半分適当。目だけ赤くて全身真っ黒の、例えるならのっぽみたいな。人型版まっ○ろくろすけかな?っていうくらい黒かった。今更だけど物理効くんだね。
ロッカーのあれは…ごめん、言われるまで忘れてたわ。激しく揺れて結果バッターンで終わりましたからね。和成さんは覚えてました?…あら、そうですか。

「ここからは先の報告も含めて言う。俺たち誠凛は3階の教室に行ってきた。第2音楽室以外は調べてないからな」

「ああ。表札は全部文字が薄れてたり、塗り潰されてたから何年のクラスか分からなくてな。鍵も持ってなかったしで行けてない。一つずつ試したのか」

「いえ、その表札なんすけど2つだけクラスと組が書かれてたんです」

「は?」

…わお。なんだろう、ちょっとホラーっぽい。
いやいやだってこれもろホラーじゃん!一度行った場所にもう一度言ったら何かある展開。普通のゲームでもありますけどね。ほら、場所が場所だから。

「5-3と5-4と書かれてたんで鍵を使って入りました。…あとの3つも行けるだろうと思って鍵を入れてみたが、どれも入らなかった。全部試してみたんだが」

「他の階に5年のクラスがあるなら話は別だが、一般的では同じ並びに同じ学年が来ますよね?別々だった方いますか?俺が通ってたとこはどこも同じ階でした」

「私もそうね」

「俺もッス」

「あっても3と2で別れたり…」

それって一学年に5クラスあるってこと?へええそんな学校もあるんだ。私が通ってた小中は共に5クラスもなかった。別学年のとこもなかったと思う。低学年の頃の上の学年がどれくらいあったかは知らないけど。
言い方変えれば、それだけ生徒数は少なかったってことだよ。多分平均くらい。

「でもそれだと下か上に別クラスが来てるはずだけど」

「あそこの下の階は3年だったろ…?上は第1音楽室しかないし。…なんで鍵が入らないんだ?」

皆の顔から血の気が引いていく。恐怖からか、不気味さからか。私は無い脳を必死に動かしてた。

ここで今一度整理しよう。3組と4組だけ書かれてて、他の3組は何も書かれてなくて鍵はどれも入らなかった。話の流れ的に5年生は5クラスあるってことか。はて、5組まで鍵あったっけ?えー、うーん…忘れちゃった。
そもそも化け物がどれほどやばいかも分からないのに。追いかけては来るけど、その後、捕ったらどうなるの?グロテスクな展開でも待ってる?というかあの化け物たちは何…?ゾンビ…にしてはなんていうか…グロさが足りないから多分違う。あとあんなに足は速く走れたっけ。…鍵が掛かっている扉をガチャガチャしすぎたら突然扉が開いて引き込まれて…エンド、とかそんなことないよね。

表札が変わってる時点でなんか…誰かが、行けるようにしてるような…となると見られてる?やだー、誰に?ってなるんですけど。…はっ!まさか誘導されてる?罠っていう可能性も…?でもこう言ってるってことは行ったんですよね!でも皆無事そうだしこれは大丈夫だったってことなんだよね。いや帰って来た時物凄く疲れてる様子だったし何かあったことは間違いないんだけど。

「その2クラスを調べたらそれぞれの教室で紙を一枚ずつと、教師の机の引き出しの中に写真が一枚。気になったから持って帰って来た」

写真…ですと…?

20151218


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