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「お、お二人さん見っけ!」

「おや」

「んぁ?」

まるで隠れんぼで鬼が見つけたような声が頭上からするのでデジャヴを感じた。さっきも似たようなことあったなあ…。と思いながら声の主である片割れへと視線を移す。おそらく、いや絶対そのご自慢の目で探してたのだろう、この並びを見ても特に驚いている様子はなかった。それどころか二人この狭い場所にいることに笑いを堪えてる様子だった
赤司はというと突然ひょっこりを顔を出した(と思うんだけど)和成に驚くことなく、もはや普通に見上げてた。この人驚くことを知らないんじゃ…。

「こんなとこで何やってんだよ?あと赤司、実渕さんが探してたぜ」

「そうか。ありがとう」

そう言って「また、」と残して行ってしまった。立つときも少し窮屈そうだったんだけど…やっぱり出たほうが良かったよね?大丈夫かな…。さすがに苦手といっても心配くらいはするし。そこまで薄情じゃないし。
でも話してみて嫌な奴というわけでもない。むしろ良いやつだと思うし、頭もいい。回転も速くてああ見えて仲間思い。最初は怪しまれてたけどそれは接点とか相手のことを知らないからとか出会ったり。最初は本気(68%)で犯人かとも思われていたらしい。でも名前もあり確率が下がって(22%)、そして今に至る。普通に話せてたのはよかった。あのまま喧嘩腰だったらどうしようかと…。

赤司が去って行ったあと思いっきり後ろに体重を預け、凝った筋肉を伸ばしていく。時々ぽきっと音が聞こえた。…歳かな。しかし伸びると気持ちいいから気にしないでおこう。
後姿を見ていた和成が振り返り、赤司がいた場所座り込む。おいこら。

「なに話してたの?」

「んー?色々話したけど…」

「色々?」

「もう敵とは見てないとか、私も連れて来られた立派な被害者だとか、あと名前の覚え方エトセトラ」

「えぇ〜…色々気になるんだけど、赤司とそんだけ話した鈴がある意味すげー。てかもう大丈夫なわけ?」

「多分。和解は出来たと思うよ」

それだけ聞いて同じように後ろに凭れ始めた。目は宙を右往左往しており、何か考えてることだけは分かった。何を考えてるかまでは分からない。やがて終着点についたのか一つ頷いて目を閉じた。結局何しに来たんだこの人。何してたのか気になっただけなのか。だったら見ていればよかったのに。あと気になると言う割には何も聞いてこないのね。だからテストで時々ミス犯すんだよ…気になるなら聞けっての。ってこれは関係ないか。

「…つか立派な被害者って?」

そこは聞くんかい。

「無関係ではなかったことかな」

「ふーん…」

何が目的かは知らないけど、こうして一部が別々にされたことには何か意味があるのではないか、と付け加えといた。まあ赤司が言ってたことなんだけどね。和成はそれを聞いて「意味ねぇ…」と呟く。私も大体そんな反応だった。

「ま、なんにせよ仲直りできてよかったぜ」

「?喧嘩してたっけ」

「あれ違うの?www」

まあ似たようなもんか、と思ったと同時に似たようなもんだろと前から声がする。喧嘩したような覚えは全くないけど、周りがそう見えたのならそういうことなのかもしれない。
確かに赤司と今普通に話せるのはよかった。じゃなきゃあんな面白い人だとは知ることもなかったからねー。いい意味で面白いって意味だよ。

それから少しして体育館内がざわつき始めた。と言っても嫌な意味でのざわつきではなく、明るいざわつき。どうやら探索組が帰って来たようだ。帰ってきたってことはそのうちまた集合掛けられるだろうし、ここにずっといるわけにもいかない。そろそろ出ようかなと腰をあげ、跳び箱から向こうを覗くと桃井と目が合った。わあ、なんて偶然。
「え、鈴ちゃん!?なんでそんな場所に!?」と驚いていたので軽く手を振っておいた。結構この場所、隠れるにはちょうどいいかもしれない。そのまま視線を入り口へと流して誰が帰ってきたのか確認。

「陽泉さんが帰ってきた」

「誠凛さんはまだか」

「みた…いやそうでもないかも」

「え?」

和成の言葉に肯定しようとしたタイミングで誠凛さんも帰ってきた。なんだかすごく慌てて帰ってきたみたいで肩で息してるのがここでも分かる。ふと見えた黒子が、火神に担がれて帰還していた。途中で体力切らしたのかな…皆さん大丈夫だろうか。
いつの間にか隣で見ていたらしい和成が行くぞと言って、私の腕を引っ掴んで跳び箱の山から出た。なんで腕を掴む必要があったんでしょうね、意味が分かりません。出た後に腕が解放されたので、もう一度手先から足先にかけて伸びをしてると、予想通り赤司様から集合せよとのご命令が。…ふざけて言ったつもりだけど意外と合うな。

「行くかー」

「おー」

定位置に向かう途中、ちらりと横目で黒子のいたほうを見る。なんでって聞かれたら何となく?って答える。するとちょうど黒子と目が合い、少し微笑んだ…ような気がした。一瞬過ぎて理解できていないが、何故笑うのか。なんか無理してない?
誠凛さんの表情は皆、疲れた様子だったけど、赤司の言った試したいことのせいなのか、道中化け物にあったから疲れてるのか…どちらにせよ、あまりいい顔ではなかった。…ちょっと心配である。
それに対して陽泉さんは何事もなくケロッとしており、あまり疲れてる様子はない。行く前と殆ど一緒ではないかというほど。なんだこの違いは…。

20150922


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