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というわけで初、待機組となったわけですが、暇である。いやまあ、逃げるように移動したからでもあるが。
周りは元から知り合いみたいだし仲がいいみたいだし、言ってしまえば繋がりはある。私は殆ど知り合いがいないからそこで固まるようなことはない。別に寂しくない。例え知り合いが大勢いたとしてそちらに行こうとは思わないかな。大きな理由としては探索続きで体も精神も疲れた…そういえば寝ようと考えてたんだったか。今なら少し寝れたりしないもんか。
こそこそと跳び箱で陰になりそうな場所に行き、楽な体制を取った。背にする跳び箱が固くてどうも気持ちよく寝れる気がしない。もうちょっと柔らかかったら…そもそも寝る方がおかしいってか。そうだね、さすがに場違いすぎるかな。

「こんなところにいたのか」

頭上で透き通る声がする。割と近くて、いや近すぎて反射的にそちらへと見上げる形で顔を上げた。体育館のライトの逆光のせいで顔は見えないが、ライトに照らされるうすら透ける髪色で誰なのかだけは分かった。だけどなんで彼がここにいる?ていうか来た?

「赤司」

「失礼する」

何も言ってないのに前斜めまで来て座り込む赤司。苦手だとかそういうのはさておき、なんでわざわざここに来て、しかも座り込むのかが謎だった。追い返すつもりはなかったが座るなと言いたい。だって狭い。わざわざ座らなくとも出るくらいは…いやどうかな。
どうしたの、と淡々とした口調でここまで来た訳を聞く。意味もなくここに来るような奴ではないと思う。まだ知り合い程度の人間なんだけど無駄なことはしないだろうな、と。

「少し話そうと思って」

「はあ。どうぞ」

「僕は高尾さんは巻き込まれた…ではなく、君も必然的に連れて来られたんじゃないかと思っている」

「唐突だね。私が黒幕って言う考えはいいの?」

「さすがにその線はないな」

君も立派な被害者だろう。苦笑いしながらも断言するかのように告げられてはもう何も言えない。考えを改めてくれるのは嬉しいけど、赤司の考えが外れた時の軽い絶望したような顔ちょっと見てみたかった。これ本人に言ったら殺されちゃうくらいヤバいだろうなあ。言わないよ、絶対。

「それで、私も連れて来られただっけ」

「ああ。君との関連が今一分からなかったが漸く理解した」

「と言いますと?」

「ずっと気になっていた。僕らと、彼ら…ここで目覚めた人たちが何故別々で、尚且つ僕らが目覚めた場所がバラバラだったこと。気づいていたかい?」

私でいう、制服組とジャージ組の人たちのことか。制服組イコール私たちはどこかの教室で目覚めてて、ジャージ組イコール体育館組は散らばることなくこの体育館にいた。気付いてはいたが気にならなかったと言ったら嘘になるけど殆ど気にも留めていなかった。赤司はいろんなことを見て覚えて、頭の隅に置いてるんだな。すごいな。

「始め、僕らにはある繋がりがあった」

「…みんな高校生だね?」

「確かにそうだけどそこじゃない。もっと内面的に」

「……ギブで」

「早いね」

つい、と言った感じでくすっと笑う。息が抜けたように笑う赤司は初めて見た。美形が笑うとこんなにも絵になる。惚れはしないけど見惚れてしまうくらい破壊力は抜群だ。はいここテストに出ますよ。
早々に考えることに放棄した私に思わずと言った感じで笑った赤司だったけど、すぐさま切り替えて話の続きに入る。

「大まかに言ってしまえば僕らの集まりは“眼”にある」

「眼?」

伊月さんたちは分かるけど他の…桃井とか黄瀬とかも何か能力持ってるの?黒子はパス回しがすごいって聞いたけど…あ、黒子はなんとなく分かったかも。パスに必要なのは味方がどう動くかでパスコースが決まる。和成がよく見てないといけないって言ってたし、それに本人も人間観察が得意だって言ってたし。
…もしかしてこれ?でも能力とは言えないんじゃ…そもそもなんで目に纏わる人たちが集められたんだ。

「まだ多少の疑問は残るがこれが一番筋が通ってる。相手にその意思があったのか、偶然かは分からないけど」

「言われてみれば確かに…。そこまでは考えてなかったわ」

そうなると私も巻き込まれた、じゃ済まなくなる。立派な関係者に早変わり。でも、変だね。

「私の目のことは和成以外誰にも教えていないのに」

おっといけない声に出てた。出てしまったものはしょうがないどうすることもできない。独り言だと思って流してほしい。
黒幕はどうやって私の目のことを知ったのか。この眼を使うのは本当に久しぶりだし、同級生でさえも知らないはず。なんなの?黒幕は人間じゃないの?だとしたら怖いね!そういえばここ普通の世界じゃなかった…化け物とかいるし。次に出るのはなんだ、幽霊化、ゾンビか、犯罪者か?あ、最後殆ど人間だね。残りのちょっとは狂人、って意味で。

そろそろ考えるのはやめておこう。変な方向に行っちゃいそうだし。
ああそうだ、ここでいろいろ赤司に聞いてみるのもいいか。いい暇つぶしにはなるだろうし。ごめんね考え事してるみたいだけど。ちょっと付き合ってほしいなー。いやなに変な話はしないよ、疑問をね、ちょっと。
今更だけどここ周り跳び箱なんだよな。私でもちょっと窮屈なのに赤司きつくないかな、何なら出る?

20150922


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