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フラグの回収ってのはある意味簡単に回収できる。

「Sさんが女の子でしたら、Yくんのメモに出てきた「なんとか」ちゃんはSさんの事かもしれませんね」

この言葉により、今一度拾った紙全てを皆で見直すことになった。少ないから見直すものまだ楽だろう。見せてもらえるついでにこっそりメモしておこう。黒子と思ったこと被ったけど、私が喋る必要もなくなったから結果オーライだね。

仮に「なんとか」ちゃんをSにしても別に辻褄は…どうだろう。Sの2枚目の紙に「ばけもの」という単語はあるが果たしてこれがRのいう“化け物”を指すものか。そもそも女の子に化け物とは酷いね(2回目)。モテないよ?それとも好きな子ほどいじめたくなるタイプの子かな?モテないよ?(2回目)
なんにせよ、この子が何歳かは知らないけど化け物呼ばわりなんてよっぽどだったのかな。

Sの2枚目の最後、“わたしだって   だもん”とはあるけど、塗り潰されてて読めない。これは化け物呼ばわりされたSが、わたしだって人間だもん、と言いたかったのではないかと推測。あくまで推測だけど…さすがに自ら「自分化け物です」とは言わないでしょ。なんで見す見す避けられに行くのさ、馬鹿か。でも子供って何言いだすか分からないから微妙かも…。
ああでもSとRの紙に、「  がないだけでばけものなんて」「  がないなんて気持ち悪いやつ」と、共に「“何か”ない」とはあるな。これだけ同じ言葉があったらRのいう化け物とはSちゃんの事と思っていいのかな。仮定としてそう決定づけておこう。…うん。

「謎解きみたいでもうギブ」

「相変わらず早いなー。もうちょい頑張ろ?」

「こういうのは大体和成か妹ちゃんで頑張ってくれてるじゃない。私は突っ込み隊長でいい…」

決して謎解きが嫌いなわけでもなく、苦手でも出来ないというわけでもない。ただ単に真面目に考えるたことがあまりない。というのも大抵妹ちゃんか、和成がふらっとやって来ては、さらっと風のように解いて行ってしまうから。だからかな。自分で考える時間があまりなく、妹ちゃんか和成に任せてしまうかのように、早目に放棄する癖がついてしまっているというわけだ。勉強は別だよ。自分で考えてるから。

「一応どこまで考えてみたよ?」

「SはRに化け物呼ばわりされ、Sはそれを否定していた…みたいな?」

「疑問系で返すなよ」

まあそうだよなー、とどこか視線を彷徨わせた。そうだよなーってことは和成も同じように考えてるって解釈していいんだよね。ね?そのまま調子に乗って言っちゃうよ?

「TくんとSちゃんは知り合いかな?」

「ん?…あーかもな。今んとこ女の子って分かってるのSだけだし」

Tくんの紙に「“最近、  くんと  くんが(省略)  ちゃんを見てた”」とある。このなんとかちゃんがSちゃんなら。逆に“なんとか”くんと“なんとか”くんだけど…この登場人物…このメモの中にいたりしないだろうか。いてくれたらラッキー、手間が省ける。いなければアンラッキー、まだ別の紙があるはずだから探さねば…。
って別に謎解きでもないし、こんなことしてる場合じゃないんだけど。そもそも目的はここから脱出する出口探し。この紙たちに足止めされてもなあ。出口に関係あったらどうしよう。

「そういや鈴、メモ出来たか?」

「バッチリだよ」

ちゃんと紙は全てメモさせてもらった。ほぼ完コピだよ。なんとかちゃん、なんとかくんに至っては少し間を開けて、ローマ字入れれるようにしたからね。なんとかちゃんの空白に小さくSとまで書いたよ、どうよ?と見せたらいいんじゃね、と返って来た。

「案外、皆繋がってたらいいのにね」

「繋がり…」

なんてことない呟きを拾った赤司がぶつぶつ何か言い出した。大きな輪になって座ってるけど、不思議とそう騒がしくない。こんなにも人数は多いのに。それと多分、赤司の声はよく響く。そのせいかな、私から見て真正面、真反対と一番距離が遠いはずなのに妙にはっきりと聞こえた。深くは考えたくないけどなんか怖いね!
顎に手を添え、考え込んでる姿はただのイケメン。それイケメンがやってこそ許されるんだよ。でもおかしいなー、赤司がやると、なんか…すっごくセレブ的な雰囲気が…あ、頭痛くなってきた。

「高尾さん」

「はい!?」

「…大丈夫かい?」

…声が裏返ってしまった。その上油断しすぎてて大きな声になってしまった。やばい、ちょっと恥ずかしい。更に言うなら赤司に心配されるとも思わなかったぁぁぁ…。全力でこの場から逃げたかった。

「こほん。…高尾さん、君も眼を持ってると言ってたね」

「…そう、デスネ」

「具体的にどんな“目”だ?」

鋭い眼光でこちらを睨みつける赤司。しかし最初の時だったり、あの時とは違う意味で睨まれて、目が鋭くて…焦ってる?ようにも見えた。
早く、と副音声まで聞こえてしまって私はざっと簡単に喋った。…喋ってしまった。あれだけ嫌々だったのに。恐るべし赤司。

「道の先…その先の部屋があれば見れないこともない。それが…?」

「目の範囲は」

「範囲?先の事ばっかで身の回りは見えないよ」

そこまで答えたらまた一人黙り込んでしまった。…おーい私には何もなしですか。
この場でさらっと自分の眼の事を話してしまったことにより周りが少しざわついている。…だから、嫌なんだよ。昔の嫌な記憶が蘇りそう。…なんか横に引っ張られる。なんだ。

「どうしたの、桃井」

「ううん…なんだか鈴ちゃんの目が死んでるように見えて…大丈夫?」

「…多分ね」

死んでるって…そんな目出来るんだ、私。ていうかそれ漫画とかの表現だけじゃないの…?そもそもしてる時点でやばいね。
今更だけど右隣に和成、左隣に桃井が座っている。もう安定だね!こうじゃないと落ち着かないっていうくらいに安心、安定感が生まれてしまっているくらいに。桃井の隣にはやっぱり青峰とやらがいて、付き合ってないとか嘘でしょとか思う。んで青峰の向こうに桜井が座っている。この並びももはや定番と化してきて…。

「次の探索メンバーを決めよう」

一人考えていた赤司が復活し、次の探索について切り出す。どうせまた次も行かされるだろうなーと遠い目をして待つ。…しかしその予想は裏切られる。

「次は…陽泉と、誠凛。行けますか」

「行けるぞ」

「ああ」

「では陽泉は3階を。誠凛は…少し試してもらいたいことが」

「お、おう…?」

以上だ、解散。と手を打ち陽泉、誠凛以外は自由に散っていく。…あれ?私何も言われなかった感じ?それって行かなくていいってこと!?…え、本当にいいの?嬉しいけどこの後が怖くて素直に喜べないわー…。

少し赤司の言う誠凛に試してもらいたいことが気になる、が後で報告してもらえるだろうからその時まで待つとしよう。

20150910


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