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「それでは報告をお願いします」

定番の赤司による報告会が始まった。主に大坪さんが言っていく中、自分もその時の記憶を辿っていく。いやだってすごく暇。職員室に入った頃遠くで化け物の足音がして鉢合せを回避するため少し足を止め、その間に鍵をもらい、コンピューター室に向かった。そこで落ちていた一台のパソコンを退け、その下に紙を発見した。それから、

「高尾の妹も別の眼を持っているそうだ」

やっぱ言うんですね!そこだけ妙に反応してしまった私はさぞおかしかったことだろう。ちら、と大坪さんたちを見ると見事に目が合った。すぐさま逸らしてどこにも見向き出来ず円の中央に当たる床を見た。カラフルなテープが目に入る。所々剥がれているところを見ながら次へ行くことを待った。

ここまでで数秒だったと思う。されど私には数分、何十分にも思えた。何も言わないと分かるとその後の事を話しだす。その様子に人知れず息を吐いた。
次は教室の話だ。眼についての説明もそこそこに、木村さんが紙を見つけ、その後和成が物音に気付き皆が警戒していたところ、掃除のロッカーが前に倒れてきたため何もなかったがあれにはビビった。まあ入口面を下にして倒れたのには笑ったけど。和成が。
その後残りの教室を見て回ったが特に何もなく。じゃあ帰ろうかって教室出たら化け物と遭遇。持ってた煉瓦で怯んだ隙に逃げて戻ってきた、というわけだ。

ざっくり言うとこんな感じだろうか。大坪さんはもうちょっと細かく言ってるけど。
話が一通り終わった途端、誰かの溜息が聞こえた。大坪さんしか喋っていなかったこの空間ではそれすら大きく聞こえる。…もしかしたらわざとなのかもしれない。

「高尾さん。君が言ってなかった事言ってくれるね?」

「…あ、ハイ」

疑問系のはずなのに拒否権なんてないようなこの威圧感…!否定したらそれこそ(色んな意味で)人生オワタになりそうだ。ここは素直に頷き、いうことを聞いておいた方がいい。そう本能が告げていた。赤司やっぱり怖い。あの笑顔が特に怖い。

言ってない事=眼の事、と解釈した私は秀徳さんに説明した時の教訓を元に、和成みたいな"上から全体を見る"んじゃなくて、"自分の目の高さから道の先を見る"と言う風に説明した。さっきは色々と混乱してたけど今は冷静に説明できた。和成の補足もあり、自分の思った風だから説明がしやすかった。
そんなに話自体は長くはなかったけど、話している間皆静かに耳を傾けてくれていたことが、私には怖かったです、まる。
一通り話し終え小さく息を吐いた。まさか他人に話す日が来るとはねぇ。

「…以上です。……それじゃ紙見ていきましょ、ね」

「あれ普通質問タイムとかあるんじゃね!?」

「ないよ?」

「ないの!?」

「何であると思ったの?」

「鈴は中々空気を読んでくれないね?確信犯か!」

「K・Y(空気・読まない)と呼んでくれてもいいのよ」

「そんなわざとらしく催促したって呼ばねーよ!?あだっ!!」

「何勝手に漫才やってんだ。轢くぞ?木村の軽トラで」

「なんで木村さん」

「軽トラ持ってるっつーから」

「その時にはぜひ私も乗せてください!」

「おういいぜ」

「突っ込み不在に俺の腹筋がやばい」

真顔で言われても。と言おうとしたとき「もういいかい」と赤司が割ってきた。いいよと答えると溜息を吐かれた。何故かは知らんが解せぬ。…赤司もこの漫才(?)に呆れたかな?
半強制的に話を戻そう。
コンピューター室と、教室で見つけた二枚の紙。一枚色が白いんだっけ。教室で見つけた紙と比較したら白かったから、まだ真新しい方なのかと思っちゃうけど。
大坪さんが白い方の紙を手に取る。

”転校生の  ちゃん。とってもかわいくて笑うともっとかわいい女の子。でも転校して来てからけがしている。なぜかそれが不思議に思えて、なんでかなって調べたらいじめにあってた。でも  ちゃん泣かないんだって。えらいね。ぼくが一緒に泣いてあげるから、がまんしなくていいんだよ。ぼくが、守ってあげる”

読み終わったのか顔を上げる大坪さん。今回のちょっと長い、ような。ていうか内容、女の子いじめられてんのか。この日記?の主は守ろうとしたのか。めっちゃいい子じゃん。優しい子ですね。でもなんでこんなのがあるのか気になるところだけど。…まさかこの学校に関係するとか?
和成を通して大坪さんの持つ紙を覗き込む。達筆って訳でもなく汚くもない字で書かれた文字列は本当に男の子?って思う字だった。ちょっとうらやま…いやなんでもない。
それとやっぱり一部塗りつぶされている。「なんとか」ちゃん。…これまでのに関係する人物だろうか。

「裏は…「Y」だな」

おっとここでまた人物増えたー!またやっかいなことになってきましたね隊長。これで何人目?確か最初がS、R、K、T…Y?何かの名前が出来そうだ。これまでに5つの…多分イニシャル的な何かだとゲーム脳が告げています。

「あれだけちょっと白いのが気になるよな」

「うん。他は古びた感じだし。Yくんのだけ白いのかな」

「さあどうだろうな。見つかったら分かるだろ」

それもそうか。座り直して次が読まれるのを待った。

“△日 はれ。
   がないだけでばけものなんて失礼しちゃうわ。わたしだって   だもん”

「裏には「S」。これが2枚目の内容だ」

ん?って思った。それが率直な感想。ある単語で引っかかった。その間に紙は二枚とも赤司の手に渡ろうとしている。それは別にいいんだけど。隣の和成に目をやると丁度目が合った。どうやら考えてることは同じらしい。「赤司、」とあまり呼ぶことない名前を呼ぶ。

「一枚目の紙の内容覚えてる?」

「ああ。二人も…いや最初にいたメンバーは気付いてるようだな」

最初のメンバー、それってつまり校長室に集まったジャージじゃない組の事を言ってる?目だけでぐるりとあの時のメンバーの顔を見ていく。なんとなく、と言った表情が見られた。他はポカーンとしていて何がなんやらと言った感じだ…そういえば紙の事は言ってたけど内容までは言ってなかったっけ?覚えてません。
赤司はそれも分かった上でか、さらっと紙について軽く説明する。次第に理解していく人たち。よし本題に戻るぞ。

「一枚目…「R」のメモの中に“化け物”と言う単語がある。恐らくこのRが言う化け物とは、この「S」の事を指していると思っていいだろう。どういう意図があったか知らないが」

RくんとS…ちゃん、かな、「わたし」って言ってたし。この二人は繋がりがあったわけだ。これでだけでも大きな進歩と言えるだろう。…なんか事件解いてるみたいな気持ちになってきた。頭脳は大人のやつかな?
しかし酷いな、何を見て化け物と言ったのかは知らないけど女の子に化け物なんて酷い男子だ。私も似たようなことあったけど。それはそれ、これはこれだけど。
あ、Sが女の子と仮定したらYくんが言ってた「なんとか」ちゃんってSちゃんのことかもしれない。そんなフラグが出てきましたよ隊長ー!

「Sさんが女の子でしたら、Yくんのメモに出てきた「なんとか」ちゃんはSさんの事かもしれませんね」

20150722


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