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――バッタン!!

教室中に大きく響かせ、僅かに砂埃を撒き上がらせ倒れたロッカー。音に対して大きく肩が跳ねてしまったが許して欲しい。あんな音出されたら誰だってビビります!ちびってはいません。…これ口に出したら和成から制裁来るんだよね…。

それから暫しの沈黙。砂埃も落ち着いたところで小さく息を吐くことが出来た。ずっとロッカーを見ていた。倒れてから一度もロッカーは動かなかった。今も動く気配すら見せない。
それをしっかりと確認したのち小さく息を吸い込んだ。

「……ねえ」

「…うん、鈴の言いたいことは分かる。分かるけど何も言わないで」

「ロッカーの奴出てこれなくね。前に倒れちゃったよ、出てこれないよね。それとも何?突き破って出てくるの?なにそれびっくり箱?」

「言っちゃったwww言うなって言ったのにwwwwwww」

相当押さえていたようで、私が言ったら栓が抜けたようで一気に笑い出した。この状況で笑える和成って案外図太いよね。ひーひー言うほどうるさいが、それだけ我慢してたことが分かる。謝らないけど。でもうるさければロッカーの中に誰か、いや何かいたら聞こえるじゃん。いやきっと手遅れか。このまま倒れたままでいてくれたらいいのだけど。フラグですか?知りません、とっとと次に行きましょう、次。

ロッカーの奴に一応気を付けながら教室を出て、次の教室へと素早く入っていった。当たり前だが大体一緒なので、これから同じ部屋の中を何度も探すのかと思うとすぐ飽き…混乱しそうだ。一応今回の目的は出来れば2階全部を調べておきたいと言うので。
さっきのは置いといて、このまま化け物が出なければこの後も楽というもの。ちょくちょく現れるし、このまま驚かされてたら寿命縮んでここで死ぬ。…化け物滅びろ。そもそもなんで学校に化け物がいるんだ。さてこの場合化け物のと取るか、幽霊と取るか…幽霊だったらただの悪霊になるよね。あっちゃー詰みましたわ。

「では先程と同じように調べてみよう」

「おう。高尾うるせぇ」

「鈴うるさいってwww」

「少なくとも私じゃないわ」

かと言って私のせいでもありません。
大坪さんが言った通りに調べに入っていきながら、周りの事も見渡した。さっきのこともあるし、どうしても周りが気になってしまう。結局あれは入り口を自ら潰して出るに出れなくなってたけど。ざまあでした。しかし先程のことがあってから教室の奥のほうに行けなくなってしまった。変わらず廊下側にいて、尚且つ机側。これ何か来たとき逃げるのに邪魔かも…。ていうか机多い。

「そっちなにか見つかったか?」

「いえ特に」

「そうか。…大方調べはついたろう。そろそろここを出るとしよう」

というのでその教室は後にした。その後いくつか調べはしたが何も出ず、何も見つからず。結局2階分で紙二枚と煉瓦一個だ。重いけど、何度か和成が持ってくれて、復活した私が奪い返す作業をしてたのでさほど疲れていない。なにやってんだって目はありましたけどスルーしておきました。
収穫はないわけじゃないし帰っても咎められないだろう、そう結論付けて最後の教室を出た。そこまではまあよかったよ。

さてここで今私らがいる場所を言おう。説明はとても難しいかもしれないが、想像してほしい。私らは手前から順に調べに行っていた。下の階は体育館があったり、外の廊下があったり…まあ道はある。対するここはその真反対に位置する場所である。下の階には保健室や会議室があったと思う。……お分かりいただけただろうか?

そう、ここは体育館側から一番遠い、言わば奥側と言ってもいいだろう。そしてここからが本番。出た先になんか見知らぬ化け物がいたさね。しかもこちら側から一番近い階段付近にいるから逃げるに逃げれない。ならばそっと奴がいなくなるまで教室にいた方がいいのではないかとも言うが如何せんじっとこっちを見られていて少しでも動けば何するかわかったもんじゃない。
一つ気になるのが、なぜすぐ来ないかと言う事だけど、多分動いたらアウト系の奴だと一人結論付けたのでそのあたりは触れないでおく。目が合ってる時に動いたらやられるってゲームがあったような気がする。それと同じ原理で行くなら目は逸らさないか、動かなければいいはず。これが正しければの話ですがね。

「…ずっとこっちを見ているだけで動かないですね」

「こうもじっとされると動くのに戸惑うな」

「けどこのままじっとしてるのもな…どうする、大坪」

「何か手はないか…」

他の方がこの場をどうするか考え始めたとき、「あ!」と一人声を上げた。そこまで大きくないものの普段と変わらぬ声量に僅かに驚く。

「いいこと思いつきました!鈴」

「んえ、なに?」

「煉瓦貸して」

「いいけど。なにするつもり?」

「まー見てなって」

さっき取り返したばかりの煉瓦が再び和成の手に渡る。その煉瓦で何するつもりだと緑間が問う。それにも同じ言葉を返し、皆が見守る中、和成は思い切った行動をする。

煉瓦を持つ手を変えた和成は大きく振りかぶりその煉瓦を手から宙へと放った。綺麗な線を描きそれは見事、奴の頭部らしきと部分へヒットした。その際ちょっとよくない音が聞こえたが聞こえなかったことにしよう。

「ヒット!」

「今のうちに降りるぞ!」

頭部らしき部分にヒットしたことにより奴はよろけ、視線が外れた。その隙と一斉に階段に向かって走る。私も走る、置いて行かれないよう、アレから遠ざかるため。
果たしてその時に好奇心というものがあったのか。階段を一段降り始めた時ふと後ろを振り返ったのだ。振り返らなければよかったと、後悔したかもしれない。
奴の上から下へ何かが湧き出し、目にも見える赤い光はこちらをじっと睨みつけているようだった。
すぐに前へ向き直したが冷汗が止まらなかった。一瞬だけだったはずなのにばっちりと目が合った。奴の口角がニタリ、上がったような気がした。

気づいたら体育館で、それまでのどの道を走って来たのか覚えていないことに気づき、ただあるのはあの目と、口。嫌と言うほど脳裏に過る光景に背中からひやりと冷えていった。

20150621
ここの化け物のイメージはブロック系のゲームで登場する終わりマンでいいと思う。…分かりずらい。


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